※この作品は年齢制限を設けています。18歳未満(高校生含)の方は閲覧を控えてください
天探女(あまのさぐめ)

= 黒 =



−おまけ−


◇◇◇






幾度も溶け合い、ようやく友雅は仰向けに寝転がってあかねの頭に腕を与えた。
剥き出しのまろやかな肩を撫でながら衾をそっと引き上げてやると、あかねがほうっと
ため息をつく。
 友雅の胸に身を預けたままゆるゆると眠りに落ちかけている恋人の髪を指先で弄び、
友雅も深く息を吐き出した。
 そのため息に、自分のような満足からのそれとは違うものを感じてあかねは
重い瞼を持ち上げる。

「・・・友雅さん・・・?」
「・・・・今回ほど、己の言葉を後悔したことはなかったよ。」
「え・・・?」

トロンとした目つきのまま小首を傾げるあかねに友雅は苦笑した。

「君にこんな意地悪をされるなんて思ってもみなかった。全く『口は災いの元』だね。
この3日間、君に会えなくて私がどれほど寂しかったか、分かるかい?」




『君も私に意地悪をしてみるかい?』




閨でのほんの戯れのつもりだったのに。





「そんな、私、意地悪なんて・・・。あ、会えなかったのは、あの子(怨霊)に意志を
押さえられてたからで・・・ホントですよ?
 永泉さんや詩紋君にあの子がひどいことを言った時だって、なんとか止めようと
したんですけど、私は全然出られなくて。」

あかねの頬に治まり掛けた朱が再び昇る。

「永泉様や詩紋・・・ねぇ。では、私の時は?」
「え?え?あ、あの、友雅さんの時は・・・・いえ、友雅さんの時だって、その、あの子が
私に出るなって・・・。」

すっと友雅の目が細くなる。

「ふぅん・・・『出るな』と言われたから出なかったんだ?『出られなかった』のではなくて?」

あかねは急に背中が寒くなった。
いつもなら一糸纏わぬ姿であっても、こうして友雅に寄り添っていれば温かいのに。

「や・・・だって・・・・・あ、あの子が・・・・友雅さんは口が上手いし、すぐに色々手を出して
くるから、私が出たら絶対言いなりにされちゃうって・・・・
だから、3日間は友雅さんには私は会わない方が良いって・・・・。」

 寒いはずなのになんだか嫌な汗が流れる。
優しく髪を撫でてくれている友雅の指が、何故恐く感じられるのだろう。

「だから、私が会いに来た時にはいつもあの怨霊だったと?」
「み、3日だけです!泰明さんだって3日は大丈夫って言ってくれたし、あの子は別に私を
傷つけようなんて思ってませんでした!」
「3日『だけ』?それがほんの短い間だと、君は言うのだね?」

友雅の指があかねの髪から肩へと移る。がっちり肩を押さえられ、ゆっくりと友雅の身体が
起きあがった。

「友雅さん・・・?」
「そう、3日は短いの・・・では、その『ほんの短い間』私がずっと君のお側にいても、君は
気にしないよね?『ほんの短い間』なのだもの。」
「はぁ?」

眠気はとっくに吹き飛んでいた。
だが久し振りの睦み合いで身体のあちこちが悲鳴をあげている。
何よりまだだるくて動けない。
なのに、友雅はまるで疲れを感じさせずに身体の位置を入れ替えると、あかねの上に
のし掛かってきた。

「これから3日間・・・『ほんの短い間』、私は君とこうしてここに居続けることにするよ。
君に意地悪されて置いてきぼりにされた分だ。異存はないね?『ほんの短い間』だもの。」




本気だ。本気でこの男、3日間自分の寝所に居続けるつもりで・・・。




彷徨いだした逞しい手が雄弁に語るとおり、ただ『居る』だけのつもりなど、あるはずがない。

「わ、ちょっと!待ってください、友雅さん、わた、私はそんな別に・・・・!」

動きの鈍い手でなんとか男の不埒な煽動を止めようとするも、全てを知り尽くした男は
あかねの身体の奥底にある熾火にあっさりと炎を上げさせる。

「あ、あんんっ!ちょっと、待ってください、友雅さん!あ、謝りますから。
だから・・・・あああぁ〜っ!」
「謝って欲しくなどないよ、神子殿。言ったろう?『私も全力で対抗させてもらう』とね?」





夜が明けてあかねの無事を確かめに来た藤姫は、帳の奥から漏れ聞こえてくる
甘やかな声に真っ赤になって立ち竦む。
友雅に対する怒りは爆発するものの踏み込むことも叶わず、局に取って返して

『あのケダモノ〜!神子様に何ということを!許せませんわー!!』

と邸中に響く声で叫ぶことしかできなかった。






 3日後。

平然と『三日夜の餅』を要求する友雅と、3日間『通って』いないのだから無効だ、と主張する
藤姫の第2ラウンドが繰り広げられることになる。




                                         fin...........



黒あかねちゃん・・・・私には無謀な試みでした・・・・。結局最後はこうなるし?
夢 見たい / koko 様