エイプリルフールの雨

= エイプリルフール =




エイプリルフールの雨



優しい雨が降る…。
あかねは恋人の腕の中で…窓に当たる朝雨を見ていた。


めずらしく自分より、寝覚めの遅い彼…。
(可愛い…)
いつもはオトナな人なのに、こうしていると子どもみたい…。
あかねは愛おしくなり、思わずおでこに唇を寄せた。
パチッ…
いきなり翡翠色の瞳が開かれ…
「おはよう、あかね」
「や、やだ…もう起きちゃったんですか、友雅さん…」 焦ってしまう。
「貴女からのくちづけを受けて、夢の世界で遊んでいられる私では、ないよ?」
100万ドルの微笑み。
(…こんな至近距離で、そんな顔しないでほしい…) あかねの鼓動は、速まる。


「ねえ、姫。今日は何日?」
「え?えーっと…」 と、カレンダーに視線を移す。
「あ、4月1日です…」
「ふうん…」
友雅は、天真から聞いたイベントを思い出した。
「今日、何かあるんですか?」 彼女は、小首を傾げる。
友雅はいたずらっこのように笑うと、眼を輝かせて言葉を告げた。


「あかね…。私は、貴女が大嫌いだよ。もう二度と顔も見たくない…」


「え……」 あかね、ショックで固まる。
「ん?」
「……わ、私…何かしました…か?」 とたんに溢れる、千の涙雨…。
「あかね!違うよ、違う…。今日は…何の日だい?」 焦りだす友雅。
「え?」 彼女は暫し考え込んで…「あッ!」と言った。
そして、あっという間に涙は止み、桜色に微笑む。


「ふう…判ってくれた?まったく…天真の言う事など、もう二度と聞くのは止めにしよう」
「…ごめんなさい、泣いたりして…」
「いや、悪いのは私だ。清らかな月の姫に…馬鹿な偽りを…」
「ううん。今はとっても嬉しい…です」 はにかむ乙女。


「《仕返し》してくれてよいのだよ」
「そんな!私…」
「是非言っておくれ。でないと、私が私を、許せない」
「あ…。そう…なんですか?えっと、じゃあ言います」
あかねは、すうっと息を吸い込んで、決死の表情で告げた。


「友雅さん。世界で一番…愛してないです!」


友雅は一瞬目を丸くした。…そしてとろけるように微笑むと…
「貴女は本当に…優しすぎるよ、あかね…」
そう言った…。


★友雅の偽り 翻訳★
「あかね…。私は、貴女が大好きだよ。もう二度と離したくない…」



【おしまい。】






Key Gift / 月乃 様