今日はごろごろデー

= 15.今日はごろごろデー =



−3−

「何か楽器を弾いてください。…音楽って癒しの効果があるって聞いたから」
「なんでもいいのかい?」
友雅が尋ねると、あかねは小さく頷いた。
それを見ると、友雅は再び女房を呼び寄せ、琵琶を持ってくるように言った。
そして、持ってきてもらった琵琶を少し調弦し。
あかねをちらりと見たあと、静かに琵琶を奏ではじめた。
あかねはそんな友雅を、うっとりと眺めた。
あかねは実は友雅に想いを寄せていたのだ。
だけど、いつも本気の態度を見せてくれないから、この恋は無理かもしれないと、半ば諦めていた。
でも、今日、八葉の役目という理由だけど、こうして自分の為にいろいろと考えてくれる姿に、それはまだ保留にしてもいいのでは、と思った。
せめて、鬼との戦いが終わるまでは。
そんな事を考えながら、あかねは目をつぶると。やはり気付かずに溜まっていた疲労と、このここちよさに、いつしか眠りについてしまったのだった。
「…やれやれ」
ぐっすりと眠りこんでしまったあかねを見ながら、友雅は苦笑した。
やはりどこか無理をしていたのだろう。
友雅はあかねを抱き上げると、隣に用意してあった寝台に寝かした。
そして、絹のような滑らかな髪を撫でながら呟いた。
「あまり私を心配させないでくれまいか?」
いつの間にか自分の心に住み始めた、愛しい少女。
彼女の為なら、自分はなんでもできる。
そんな自分に戸惑う事もあるけれど、それもまたいいと思う。
「この戦いが済んだら…」
この想いを彼女に伝えよう。
それまで誰のものにもなりませんように。
そんな気持ちを込めて、友雅は額にくちづけを落としたのだった。







真琴のふる  ふらわ〜 / 北条真琴 様