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チョコレート効果 ○% 〜友雅編〜

= チョコレート効果 ○% =





  『明日の放課後、マンションにおいでv』

  友雅は、あかねの携帯にメールを送ると
  一人静かに、ほくそ笑んだ。


  「準備は万端、後は兎を待つのみ」





チョコレート効果 ○% 友雅編〜





  事は、バレンタインまでさかのぼる。


  京と違い、こちらの世界では色々なイベントがあり
  プレゼントをする習慣が多い。
  それは友雅にとって、嬉しい事だった。
  何かにつけて、あかねを構えるから。
  真面目で経済観念のしっかりした、年下の恋人は
  普段は全くプレゼントを受け取ってくれないのだ。
  だからつい、イベント事は張り切ってしまう。

  バレンタインだって、本当は食事に行くつもりだった。
  でも手ずからに編んでくれた、アランセーターに
  嗜好に合わせて選んでくれた、チョコレート。
  これを、至福と言わず何と言おうか!
  余りの嬉しさに、結局その日はあかねを手放す事が出来なかった。 





  フト、その嬉しさを噛締めていると
  インターホンから、チャイムと待ち望んだ声が聞こえた。

  
  「友雅さん」

  「待ってたよ、今開けるから」


  軽い金属音と共にドアを開けると、制服のままのあかねの顔が綻んだ。
  

  「あっ、着てくれてるんですね」

  「ふふ、私以外の誰が着ると言うんだい。 さっ入って」

  「お邪魔します」

 
  部屋に招くと、白雪は不思議そうに立ち止まった。


  「お料理していたんですか?」

  「まぁ、ちょっとねぇ・・・こっちにいいかい」

 
  意味深な笑みで、はぐらかす様にリビングへ通すと
  テーブルの上の大きな紙袋を見詰る。
  

  「これ?」

  「中に服が入っているから、着替えてくれる?」

  「えっ!?」

  「だって、制服のままって訳にもいかないだろう?」

  「友雅さんが『放課後においで』って言うから
   ・・・だったら、一度帰って着替えてきたのに・・・」

 
  言葉を発しながら、段々と眉間を寄せる白雪
  どうやら、こちらの罠に気が付いたようだった。

  まぁ、そうするのが性質の悪い大人の楽しみでもあり
  そうせざるを得ないのは、素直に受け取らない可愛い少女の所為でもある。

  さてここで、拒否の言葉を言わせない為に、もう一押し。


  「ん、手伝ってあげようか?」

  「! 分りましたから、出て行って下さいっ!!」

  「おや、残念だねぇ」


  案の定、真っ赤な顔をして無意識にこちらの要求をのむ。
  あかねは慌てて、友雅をリビングから追い出した。





  暫くしてリビングから出てきたあかねは、淡い生成りのコットンワンピを着ていた。
  2WAYタイプで、いま着ているパフスリーのボレロを取ればキャミワンピになり
  フロントセンターにはシフォンを使った、シンプルながら可愛らしいデザインのもの。


  「うん、やはり可愛いよ、
   ショーウインドーで見掛けた時から、白雪に似合うと思ってねぇ。
   ホワイトデーのプレゼントに貰ってくれるね」

  「・・・Xmasにカクテルドレスなんて貰ったから、頑張って編んだのに
   今日、こんな服貰ったら意味ないじゃないですか・・・」

  「そう? 君のセーターに比べれば足元も及ばないと思うけれど」

 
  その言葉は本心。
  あかねが編んでくれたセーターに比較できる品物などあろう筈がない。
  本当はもっと高級な服でも構わないのだ。
  ただ、それだと萎縮してしまい受け取ってもらえないだろう。
  だから、あかねの好みそうな服を選んだのだ。
  
  暫く考えて諦めたのだろう一度肩を落すと、笑顔を見せてくれた。

  
  「有難うございます友雅さん、大事にしますね」

  「ふふ、その微笑が何よりの報酬だね。
   じゃっ、もう一つのプレゼントも貰ってもらおうかな」

  「はっ?」


  訝しがるあかねの背に手を添え、ダイニングに入る。
  テーブルの上にセッティングされている料理に、思わず目を見張った。
  そこには、フランス料理のフルコースが並べられてあったからだ。


  「とっ友雅さん、コレどうしたんですか!?」

  「出張サービスがあるのだよ。
   外に食事に行くには、その格好はまだ寒いからね。
   春用のコートをプレゼントしても良かったのだけど・・・ホラホラそんな目で睨まないw
   だから、作ってもらったのさ」

  「もーっ! どうして、こーゆー事するんですか!?」

  「君は真面目すぎるからね。
   こんなイベントでもないと、プレゼントなんて受け取ってもらえないし
   気にする事はないよ、チョコレートのお返しさ」

  
  本人は睨んでいるつもりなのだろうが、それは可愛いとしか言いようがない。
  考えている事だって、手に取るように分って 
  予想通りの、表情と行動が余りにも愛しくて、自然と頬が上がる。


  「さっ、冷めない内に食べようか」


  まだ幾分、不満げではあったが、懐柔できる自信はあった。
  あかねは料理が上手い上に、中々研究熱心で
  プロが作った料理は、彼女の好奇心を満たす事が出来るだろう。
 
 
  「ご馳走様でした〜美味しかったですv」

  「ふふふ、ソレは何より。
   さて、食後はデザートの出番かな?」


  あかねの手を取り、キッチンの方に移動していく。
  キッチンは対面式のカウンターも兼ねている造り。
  ほんの少し照明を落し、本物のバーの様な雰囲気に仕立てた。

  あかねをカウンターチェアーに座らせると
  用意してあったグラスとツールを取り出し
  目の前でカクテルを作り始める。
  
  カクテルグラスに ストロベリーアイスとマシュマロを盛り付けて
  パッソアと生クリームを合わせてビルド、ココアパウダーを振り掛けた。


  「はい『マシュマロ・ストロベリー』だよ。
   ホワイトデーには、ピッタリなカクテルだろう」

  「えっ!こういうのもカクテルなんですか?
   可愛い、普通のデザートみたい」

  「でも、アルコール度数はあるよ・・・まぁ、ビール程度だけどね」


  『酒』と言われ、少々ためらっている様子だが
  見た目は、アイスのデザートと変わりはない。
  度数も少々低めに言っておいた・・・本当はビールよりあるのだが
  デザートカクテルは、度数の割りに口当たりがよく食べやすい。
  あかねも一口食べて微笑んだ。

  
  「美味しいv 友雅さん凄い、カクテルなんて作れるんですね」

  「ふふふ、まだいくつか作ってあげようか?」

  「わぁ、本当ですか」


  あかねの好みそうな甘口のデザートカクテルを作る。

  チョコアイスとベリーリキュールと生クリームの『永遠の愛』
  ストロベリーアイスとコアントローショコラの『SWEET LOVE』
  ブラウニーとコアントロー、ベリーアイスの『ストロベリー・チョコレート』

  おおよそ、カクテルの名前は色々な種類がある。
  笑えるもの、言葉に出来ない程セクシーなもの、そして意味深なもの

  暫く嬉しそうに食べていたのだが、気まずそうにあかねが聞いてきた。
  
  
  「・・・友雅さんは飲まないんですか?」

  「私もかい?」

  「一人で食べてもつまらないですもの」

  「そうだねぇ・・・折角、白雪がいるしねぇ」

  「?」
  

  …本当に君は、優しい姫君だね。
   こんな男にまで気を使ってくれる。
   その優しさを逆手にとって、罠を張り巡らせるなんて
   何て無粋で卑怯な男なんだろうね、私は…


  ジンとコアントローとレモンジュースをシェイカーに入れて軽く振る。
  グラスに注がれたカクテルは、真っ白でフルーティな香りがした。


  「・・・綺麗・・・友雅さん、少し飲んでみてもいいですか?」

  「構わないけど・・・多分・・・」


  言い終わらないうちに、あかねはそのカクテルに口を付け
  思いっきり顔をしかめる。


  「辛〜いっ!!!!!!!!!!!!」

  
  予想通りの反応に、友雅は肩を震わして笑った。


  「それはそうさ、ジンベースのカクテルだもの。
   アルコール度数も30%ぐらいはあるしねぇ。
   でも私にはコレくらいが丁度いい・・・いや少し甘いぐらいかな?
   名前の通り、甘く、心地よく酔わしてくれるのだよ」

  「名前?」

  「『ホワイト・レディ』・・・白雪、君の名の通りにね」 


  クイっと一口でカクテルを飲干すと、そっとあかねの手を取りキスを落す。
  それだけで終わらないと踏んだのだろう。
  咄嗟に手を引こうとしたが、その前にきつく抱締めた。
  腕の中で体勢を変えようとモゾモゾと動くが、逃す様な事はしない。


  「とっ友雅さん、もうこんな時間だし、私帰らなきゃ」

  「少し酔いを醒ましていきなさい。
   いくら一つのアルコール度数が低くても、アレだけ食べたら
   気が付かなくても酔ってる筈だよ」

  「!」

  「それに私も飲んでしまったから、車で送ってあげられないし」

  「!!」
  
  「あぁ、自宅の方にはちゃんと電話を入れてあるから心配ないよ」

  「!!!」  
  
 
  上目遣いで軽く睨む、あかね。
  頬が紅潮しているのは、アルコールの所為だけではない。
  コレだけ罠を仕掛けたのだ、逃げられないと分かっただろう。
  小さな躰が先の事を予想して、ゾクッと震えているのが分った。

  友雅はあかねをお姫様抱っこにすると、息が掛かりそうなほど顔を近づける。


  「何か、ご質問は白雪?」

  「・・・・・・・・・・・・友雅さんのバカ」  

  「褒め言葉だと受け取っておくよ」


  艶やかに微笑むと、唇を重ねた。
  口内を貪り、深く激しく舌を絡ませる。

  あかねの唇は普段よりも、もっともっと甘く感じた。
  カクテルの甘さだけではない、雄の本能を痺れさせる様な甘さ。






  朦朧となっているあかねを、そっとベッドに下ろす。
  体重をかけない様に覆い被さりながら、もう一度キスをする。
  柔らかなワンピースの生地の上から胸を軽く揉みしだき
  反対の手は、ゆっくりスカートを捲り上げ、内太股を撫上げた。

  
  「んんっ!」


  口が塞がれ舌を絡められているので、くぐもった吐息のみが微かに漏れる。
  ソレがなんとも艶っぽく、友雅の性質の悪い部分をやんわりと煽ってゆく。
  っつと下着の中に指を忍ばせると、既にソコは潤い始めていた。


  「ふふ、キスだけで感じた?」

  「っ! 意地悪っ!!」

  「おやおや、私の所為かい? あかねが可愛いのがイケナイのだよ。
   あぁでも今日はホワイトデー、男が尽くす日だものねぇ。
   『申し訳ございません姫様、今すぐお慰めいたしますので』」

  
  芝居がかった口調で、わざとらしくそう言うと
  ワンピースをいとも簡単に脱がしていく・・・勿論、下着も全部。 

  手と舌であかねの全身を丁重に隈なく愛撫する。  
  優しく揉みしき、撫で擦れば、湧き上がる官能の波に耐えている様だ。
 
  余りにその様子が魅力的で、もっと悦楽に震える様子が見たくなった。
  じわじわと嬲っていると、焦らしすぎたのだろう
  あかねが荒い息を吐きながら、こちらを見ていた。
  
  紅潮した羞恥の表情と涙目の視線が、ゾクッと雄の感情を煽る。
  もっと、もっと、羞恥に快楽に淫靡に染まる貌が見たい。
  他の誰も見た事のない、私だけに見せる貌が
 
  その為に、精一杯の平静を装った。


  「何かな姫君? 私は馬鹿で意地悪らしいからねぇ。
   一体姫君が何を望んでいるのか・・・言ってくれないと分らないのだよ」

  「!」

 
  その瞬間、想像以上の好い貌に染まった。
  こんな要求をされるのは生まれて初めてで
  理性と快楽の間で、懸命に揺れているのだろう。


  「ねぇ、あかね、どうして欲しい?」

  
  耳朶を執拗に舐めながら、擦れた声で意地悪げに囁く。
  しかし流石は神子殿。
  そう簡単に邪悪な誘惑には乗らない様で、可愛らしい唇を固く閉じた。
  口を開かないのなら、開かせるのみ。
  くっ咽で笑うと、ほんの少しだけ強めに刺激する。

  
  「! やっ、あぁぁぁっ!」


  一度口が開けば、紡がれるのは妙なる天上の調。
  もっと、もっと、もっと、嬌声が聞きたくて
  やわやわと、しかし確実にあかねの弱点を責める。
  

  「ねぇ、教えて?」


  しかし平静を装うのも、もう限界で
  あかねから『おねだり』の言葉を引き出すのは諦めて
  このまま抱いてしまおうと思った。


  「あっ・・・・・・・友雅さん・・・を・・・下さい・・・
   ・・・と・・・もま・・・さ・・・さんの・・・・・好き・・・に・・・して・・・下さ・・・い・・・・」

  「っ!」


  瞬間、頭が真っ白になる。
  それは望んでいた以上の言葉、そして理性を完全に砕いてしまう言葉。
  自分でも分るほど妖艶な深い笑みが浮ぶ。


  「仰せのままに」










  友雅はあかねの言葉通り、自身が満足尽くすまで、その姿態を貪った。
  体力の差がアリアリと違う二人。
  途中であかねが懇願しても、最早、止める事は出来なかったのだ。

  それでも、未だ余熱を孕んでいる自身を見れば100%をぶつけた訳ではないが
  大人の男がこれだけ無茶を強いたのだ、流石にこれ以上は無理というもの。

  疲れきって隣で眠っているあかねを、憂いを含んだ自嘲ぎみな笑みで見つめ
  労わる様に優しく髪を梳き、涙で紅く染まったまぶたにキスを落す。



「99%のチョコレートは甘くないね、あかね」



最初「チョコレート効果〜」を書いていて
余りにヤツが、余裕綽々だったのにムカついて(ーー゛)
「あかね編」と「友雅編」に分けました
正味ウチのヤツは、事あかねちゃんに対して、そんな余裕はないですw
姫君主義 / セアル 様