はい、あ〜ん
「ヤレヤレ、天照大神アマテラスオオミカミはすっかりご機嫌斜めなご様子だね」
「一体、誰の所為ですかっ!」
「ハイハイ、私の所為だよ。 だけど、そんな魅力的な花唇で誘惑されては・・・ねぇ」
「誘惑なんかしていませんっ!!」
「おや、それは心外だ。 何時も、どんな時も、君が側にいないその瞬間だって 白雪は私の心を、熱く激しく煽り立てているのだよ、これ以上無い程にね」
「!!!」
まるで原因がコッチにある様な言われ方に、あかねが思わず反論しようとした時 ピンポ〜ンと部屋のチャイムが鳴り響いた。
「おや、天照大神を天岩戸より出す為の天鈿女命アマノウズメノミコトが来た様だね」
「?」
友雅がドアを開けると、ギャルソンがカートを押し室内に入ってくる。 慣れた手つきで、テーブルに食事をセッティングすると軽く会釈をし、出て行った。
「お腹が空いただろう、さっ食事にしようか」
確かに、ルージュの発売記念のパーティだったので、用意されていたものは 飲み物とカナッペの様な軽食のみ。 しかもソレさえ、口にする余裕はなかったのだ・・・その元凶がにこやかに微笑んでいる。
要は、食べ物で釣ろうと言うのだ。
『馬鹿にしないで下さいっ!』と言い掛けた時、あかねのお腹が空腹を訴えた。 朝は友雅に迎に来られて、昼はエステで磨かれて、夕方からパーティ ・・・半日、何も食べていない計算になる。
複雑な心境のあかねに、友雅が最後の一押し。
「では、私が天手力男命アマノタジカラオノミコトとなって、天照大神を引っ張り出そうか?」
友雅は、あかねの好きそうなプチフール摘み、口元に運んだ。
「岩戸を開けてくれないと、私が君を食べてしまうよ」
「!(///)」
「まぁ、ソレならソレで一向に構わないがね。 いや寧ろ、そうしてくれた方が私にとっては美味しいかな?」
友雅の口角がニヤリと上がり、声質もどこか艶を増す。
まさに『門前の虎、後門の狼』 眼前には妖しげな笑みを浮かべる元白虎 背後にはキングサイズのベッドがあり、狼が舌舐めずりしている様な気がする。
艶然な笑顔の最終宣告。
「はい、あ〜んv」
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