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とろけるのはチョコ? それとも・・・? |
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= とろけるのはチョコ?それとも・・・? = |
はっはっと息を弾ませ、あかねは学校から急いで家へと帰る。 約束の時間にはまだ間があるのだからそれほど急ぐ必要もないのだが、それでも逸る気持ちを抑えられない。 「ただいまあ!」 そう言うと同時に、足は台所へ。 パクンと冷蔵庫を開け、昨日用意したものを確認する。 (うん、あるある。) それを見て、満足そうに頷く。 「なあに? 帰るなり冷蔵庫なんか開けて。」 「あ、お母さん。」 「心配しなくても、食べたりしないわよ。」 母親があかねを見て苦笑する。 「今日はご飯いらないのよね?」 「うん。友雅さんと約束してるから。」 「宿題は済ませてから行きなさいよ?」 「もう学校でやってきた。」 「へえ?」 母親の顔には、冷やかすような笑みが浮かぶ。 「だって友雅さんがちゃんとそういうことやらないとダメだって。」 「ふーん。さすが大人ねえ。」 娘の恋人はかなり年上だ。 初めはその年の差に心配もしたが、今ではすっかり信用しきっている。 「ま、そういうことなら。」 母親は、ちょっとひそひそ声になる。 別に家の中には他に誰もいないのだからそうする必要もないが、そこは雰囲気というもので。 「門限、伸ばしてあげる。どうせお父さんは出張でいないしね。」 「ほんと?」 「ただし、帰りはちゃんと送ってもらうのよ?」 「わかった。ありがとう、お母さん!」 あかねは取り出したもののラッピングを済ませると、また家を出て待ち合わせの場所へと向かった。 あかねは、はあっと手に息を吹きかける。 待ち合わせの時間よりも、だいぶ早く着いてしまった。 まだ三十分以上もある。 それでもきっと待つのは苦ではない。 寒さに自然と足踏みしながら、友雅が来るのをわくわくしながら待った。 二十分ほど待っていると、その待ち望んだ人が現れる。 「もう来てたのかい?」 「友雅さん!」 「待たせてしまって、すまなかったね。」 謝る友雅に、あかねはううん、と首を振った。 「まだ待ち合わせの時間はきてないよ。大丈夫。」 「そう?」 友雅はあかねの手を握る。 「こんなに冷たくなって・・・。だからどこかの喫茶店ででも待ち合わせしようって言ったのに。」 「ううん、いいの。ちょっとあったかいところじゃまずいから。」 「え?」 「はい、これ。」 あかねは包みを取り出すと、友雅に手渡す。 「これは・・・、チョコかい?」 こっちに来て初めてのバレンタインだが、これだけ世間で騒いでいればそれがどういうものかはさすがに友雅でも知っている。 仕事先でもいくつかもらった。 「うん。昨日ね、作ったの。」 「あかねの手作り? それは嬉しいね。」 相好を崩す友雅。 「あのね、これ生チョコなの。冷やしておかないと溶けちゃうんだ。」 「それで外で待ち合わせを?」 「うん。」 寒い中でかなり待っていただろうに、にこにこと笑って自分にチョコを差し出すあかねに、友雅も自然と笑顔になる。 「ありがとう。大事にいただくよ。」 「うん。味見はしたけど、おいしいと思うよ。」 たとえあかねがそう言わなくても、あかねの手作りならどんなものだっておいしく食べる自信はある。 「それじゃ、暖かいところに入るのは無理だね。どこかでテイクアウトのものでも買って、私の家に行こうか?」 「うん、そうしよ。」 友雅とあかねは夕飯のおかずを買い込むと、そのまま友雅の家へと向かった。 夕飯の間、冷蔵庫で待機していたチョコがテーブルに登場する。 「おいしそうだね。」 友雅はチョコをひとつ摘む。 友雅が知っているチョコとは違い、感触が柔らかい。 口に入れてみる。 柔らかいチョコが、あっという間に口の中で溶けていく。 「・・・うまい。」 想像以上においしい。 もっと甘ったるい味を想像していたのだ。 「えへへ、友雅さん好みにと思ってね? ちょっと洋酒を多めに入れたの。」 「ほう。」 友雅の好みまで考えて作ってくれたことが嬉しい。 友雅はもうひとつチョコを摘むと、あかねの口へと差し出した。 「あかねも食べるかい?」 「うん。」 あかねは素直に口を開き、友雅の手から直にチョコを食べる。 「おいしい・・・。」 幸せそうに笑うあかねを見ると、友雅まで幸せな気分になった。 こんな幸せを感じる日が来るなんて、少し前までは思いもしなかった。 友雅がふと自分の指を見ると、さっき少し触っただけなのに溶けたチョコがそこについている。 「ね? すぐ溶けちゃうでしょ?」 あかねは友雅の手を自分の方に引き寄せると、ぺろっと友雅の指についたチョコを舐める。 「・・・ふふ。」 あかねが悪戯っぽく友雅を見上げ笑う。 友雅は一瞬目を見開きあかねを見たが、すぐにその瞳に怪しい光が宿る。 「・・・確かにすぐ溶けるね。でも。」 友雅はあかねを自分の膝へと抱き寄せる。 「私は他にもすぐ溶けるものを知っているよ?」 「え?」 そう言うなり、あかねのあごを持ち上げその赤い唇に口付ける。 最初は優しくついばむように。 しかしそれはすぐに深いものへと変わる。 ようやく二人の唇が離れた時、あかねは潤んだような瞳で友雅を見つめる。 「ほら、その目。もうトロンと溶け始めて、私を誘っている。」 友雅は怪しく微笑むと、再びあかねの唇を求める。 そしてその手はあかねのブラウスのボタンをはずし、その柔らかな胸へと直に触れた。 「ここも・・・、触れると溶けそうだ・・・。」 友雅は唇をその胸へと移し、まるでさっきチョコを味わったようにその胸の尖りも味わう。 「はぁっ・・・。」 あかねから漏れる、熱い吐息。 友雅はチョコを手に取ると、あかねの胸へ押し当てた。 チョコは、あかねの体温でじんわりと溶け始める。 「ああ・・・、ここと一緒に味わったら、さぞかし・・・。」 友雅はチョコごとあかねの先端を口に含み、舐め上げる。 「んん・・・。」 友雅のシャツを掴み、その甘いうずきに必死で耐える。 「・・・あっ。」 「ふふ、こっちはもっと溶けてるね。」 「やぁん・・・。」 友雅が触れたあかねの別の場所は、友雅の言う通りもうとろとろと溶け始めていた。 友雅はあかねを横たえ、チョコを手に取るとそのとろけている箇所にも・・・。 やがてあかねの耳には、いやらしい水音が聞こえ始める。 「や、やだぁ・・・、そんなこと・・・。」 「せっかくあかねにもらったチョコだからね。もっとおいしく食べないともったいない。」 「で、でもぉ・・・。」 「さっきよりも、溶けるのが早いね。かなり熱くなってるのかな。」 「あっ、あんっ!」 「あかねの味と、混ざって、・・・すごく・・・おいしい、よ。」 途切れ途切れに聞こえる友雅の声。 いつも以上に感じさせられて、あかねは息も絶え絶えになる。 いつもなら受身だけのあかねなのだが、今日は驚いたことにあかねは友雅の方へと手を伸ばすとその身体をまさぐり始めた。 そして、その場所にたどり着くと。 「友雅さん・・・、私にも・・・。」 と言ったのだ。 友雅は珍しいこともあるものだと思いながら、あかねの意図を汲んで体勢を変えた。 「私も、チョコ、食べたい・・・。」 あかねもチョコを手に取り、目の前のものに押し当てた。 そこもやはりかなり熱くなっているのか、チョコはすぐさまトロンと溶け始める。 「おいしそう・・・。」 チョコバーと化したそれを口に含むと、甘いチョコだけではない味もする。 かなり友雅の方も感じているらしい。 「・・・う・・・。」 いつもならめったに声を出さない友雅も、さすがにうめき声を上げる。 チョコがすっかり舐め取られたころには、もう我慢の限界というところだった。 「あかね・・・、もっと深く君の身体を味わいたい・・・。」 「うん・・・、食べて・・・?」 その日、友雅は心行くまであかねのとろける体を堪能したのだった。 その後。 あかねと甘い時を過ごす度にあのバレンタインの時のようにあかねからも求めてくれることを期待する友雅だったが、残念ながらそういうことはなかった。 (そういえば・・・、あのチョコにはかなりお酒が入っていたな・・・。) たぶんそのせいであかねも大胆になったのだろうと友雅は思う。 そして。 (ホワイトデーのお返しは、洋酒入りのケーキなんかいいかもしれないね。) ホワイトデーの甘い夜を期待し、今からどんなケーキにするか社のデスクのパソコンで検索したりする友雅なのであった。 |
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浮舟 / 珊瑚 様 |