「Choco Holic? Love Holic?」

= ちゅーのついでにペロンって舐められたり?キャー/// =






―――来週の水曜日は平日だけど、友雅さんのところに行きますから・・・。

先週の週末デートのとき、友雅はそうあかねに言われていた。

もう1月の末あたりから、バレンタインのチョコレート商戦はテレビのニュースでも やっていたくらいなので、友雅も知ってはいたが、自分の愛しい人から
想いをもらえるというのはやはり嬉しいものである。 だから、友雅も14日を楽しみにしていた。


あかねはその日、学校の委員会で遅くなっていた。
チョコレートを自宅で作り、持って行こうかと考えていたが、そうすると友雅の
マンションに向かう時間が遅くなりそうなので、材料一式を持って友雅宅へ
向かうことにしたのだった。


友雅からもらった合鍵で部屋に入る。
あかねはこのことがいつも楽しみだった。
自分は唯一、友雅の生活に立ち入っていいと許された人間、そういわれているような 気がするからだ。
さらにいうと、旦那さんの帰りを待っている奥さん、のようなシチュエーション。
そのことがあかねをうきうきさせるらしい。




今日はバレンタイン。
友雅はいつも、愛しているよと言ってくれるから、今日くらいちゃんと
お返しがしたい。私も友雅さんのことが好きですと。普段は照れているだけで、
本当はその言葉も心も嬉しいですと。

「さあ!頑張るぞ!」

あかねはチョコ作りに取りかかった。





友雅が家のドアを開けると、甘い香りが漂ってきた。

キッチンから音がするが、あかねは自分が帰ってきたことに気付いていないようだ。
友雅はなるべく足音を立てず、そちらへ向かう。
案の定、あかねはチョコレート作りに懸命になっていた。

友雅はクスリと笑いながら、背後に忍び寄る。

「ただいま」
「ひゃぁっ!」

あかねは持っていた湯煎のボールを落としそうになった。

友雅の美声は、心積もりのなかった耳には、かなり毒だ。

「そんなに驚くことはないだろう?ここは私の家なのだから」

「で、でも!いきなりおどかそうとして、後ろから声かけるなんて、悪趣味です!」

うらみがましく、上目遣いで睨んでも友雅はなんのその。

「機嫌を直して、姫君。2月14日に、きみを怒らせたくはないよ。
・・・この、今作っている完成品をいただけるのだろう?」

「そうですよ。それなのに友雅さんたら・・・」

「ごめん、ごめん。」

これで機嫌を直して? そう言って、チュッとあかねの頬にキスを落とした。
あかねがこういうスキンシップに弱いことを知っていて、 あえてするのだから困りものだ。

・・・と、おや、と友雅は視線を落とした。
あかねの左手に湯煎で溶かしたチョコレートが付いていた。

友雅は頬にキスするのと同じように、ペロリとあかねの手のチョコレートを舐め取った。

「と、とと友雅さん?!」

自分の手に付いたチョコレートを自分で舐め取るくらい、何でもないことなのに、
友雅にされると、この上なく恥ずかしい行為をされているように感じてしまう。
だいたい、そのことを変に意識してしまう自分が何より恥ずかしい。

「と、友雅さんのばかぁ」

あかねは抗議のように、ポカポカと友雅の胸を叩くと、
友雅はクッと笑う。

「感じてしまった?」
「!!も、もう、知らない!」

そっぽを向くあかねを友雅は後ろから抱き寄せ、
そんなきみが堪らなく可愛いよとささやいた。


あかねの作りかけのチョコレートが完成するには、まだ時間がかかりそうである。




いつものごとく、甘々です。このあとの展開は皆さまの妄想で!
月待講 / 湖乃ほとり 様