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The last sacrifice 〜最後の生贄〜

= 悪魔と生け贄 =






諸外国から『千年帝國』と呼ばれる皇国があった。
その名の通り千年もの間、一つの血族が国を仕切っているのだ。
幾度の侵略や、紛争、内乱などをものともせずに

常識では考えられない・・・そう、その帝國には秘密があった。



皇帝は眉間に皺を寄せ、考え込んでいた。
自分は頑張った、頑張ったのだが、こればかりはどうしようもなかった。
いっその事、血族から養子縁組を結んで事なきを得ようかとも思ったが
それでは、契約を反故にしてしまう。
普通ならばれる事は無いだろうが、如何せん人外の力が及ぶ処。
『千年帝國』の終末なのかもしれない、よりによって最後の契約の年に。

仕方が無い、と皇帝は腹を括った。

用意しなかったのではない、出来なかったのだ。
余計な小細工をせず、全てを正直に話し、代わりを立て
その上で判断を仰ごう。


皇帝は、実子達を召還した。




The last sacrifice

 〜最後の生贄〜






「えぇ〜っ! 何ソレ!?」

「仕方ねぇーだろ、今はお前が魔王なんだから」

「『人間の女の子を食べる』なんて出来ないよっ!
 だって私、ベジタリアンなんだモン!!
 それにそれじゃ、その子ってまるで生贄じゃない!!!」

「・・・生贄なんだよ」
  
「ひっど〜いっ!!!!」
 
「あのなぁ〜」

「まぁま、魔王様も先輩も」

「魔王様なんて呼ばないで、詩紋君」

「じゃぁ、あかねちゃん、落ち着いて聞いてよ・・・ね」



天使の様な、金髪碧眼で柔らかに微笑まれれば
少女の息巻いていた魔力も、次第に収縮していった。

重厚な黒の玉座に鎮座するのは、全く似つかわしくもない
桜色の髪の華奢な少女。 



白の天界と対を成す、黒の魔界。
規律厳しく聖人君子しか認めない、天界。
何事も自由で本能の開放を赦される、魔界。
そして、そのどちらでもあり、どちらでもない、人間界。

善と悪、そう両極端に分けられてしまいがちだが
善には善の、悪には悪の、秩序というものがある。  
何処も表裏一体の世界、簡単に崩す事は理に適わない。



その魔界を今治めているのは、魔王たるこの少女
正確には、つい最近その座に就任したばかり
魔王は世襲制ではなく、至極単純明快な解決策に則って行われる。

現魔王の死期が近くなった時、最も魔力の強大な者が
無条件かつ強制的に選出される。
・・・今回ソレが、あかねであった。

魔王が単独で暴走されたら敵わない。
だから二番手三番手の者が補佐をさせられる。
・・・今回ソレが、天真と詩紋であった。

そして魔王の最初の仕事が『人間の生贄を食べる』事だったのだ。



「仕方ないんだよ、前魔王様がある人間と交わした契約なんだから。
 『百年に一度、第一皇女を生贄に捧げる代償に、千年帝國を築く』
  その、最後の年なんだ」



羊筆紙に血文字のサイン、紛れもなく正式な契約書。



「む〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ 
 前魔王様が、早死になのがいけないんだモン!
 なんで、魔王が千年程度で死んじゃうのよ!!」

「まぁ、仕方ねーよ・・・百年に一度の生贄を『大事に喰って』たんだから」

「? 人間を食べると、早死にするの??」
  
「意味合いがね」
  
「まぁな」

「???」



天使も悪魔も、基本何も食べなくても生きていける。
そして、恐ろしく長寿で位が上になればなる程
それが顕著に現れた。

天使は、敬虔な祈りと光が糧となり
悪魔は、色々な欲望や闇の力が糧となる。
禁欲的な天使と違い、悪魔は嗜好的に肉を食べる者もいる。
もう一つ、他人の魔力や精気を搾取する事もある。
相手が天使や悪魔の場合は何でもないが、人間は一溜りもなく
その代償は、最高の快楽と引き換えの消滅。  

しかし搾取する事も出来るが、分け与える事も出来る。  
前魔王は生贄の皇女に自分の魔力を分け
人としての寿命が尽きるまで『大事に喰べて』いたのだ。
その為に自らの寿命を削る事は重々承知の上で


何事においても自由気ままな、悪魔の世界。
だがそれでも、いやそれだからこそ『契約』の意味が重く圧し掛かる。
天地の理に叛く事は、天帝だろうと、魔王だろうと赦されない。



「『命ある部分』を取り込まないと、契約は成されないからね
 全部食べる必要はないんだ、指先の一部でもいいからさ」



勿論、女同士であろうとその意味の『喰べる』事は可能だが
どの世界の悪魔がここまで純粋培養なのか!と突っ込みたくなる程
全く知識の欠片もない彼女に、方法を教えるのは酷だろう。
だから態々教える気には、なれなかったのだ。



「・・・女の子にそんな怪我を負わせるなんて・・・」

「女尊男卑かよ」

「だって、女の子が弱いのは当たり前じゃない!」

「俺等より、いや魔界で一番強いヤツの言葉じゃねーよな」

「魔力と腕力は違うモンっ!!」

「とにかく、皇女を連れてくるからな、覚悟を決めておけよ!」

「じゃぁ行ってくるね、あかねちゃん」



二人はそう言うと姿を消し、残された魔王は深い溜息を零す。  



「も〜〜〜〜〜ぅ、前魔王様の馬鹿!」










哀れ生贄を乗せる祭壇の前に、強大な魔力の渦がなし
二人の悪魔がその姿を現す。



「お前が、最後の生贄か・・・ん」

「あれ!?」



二人が驚いたのも無理はない。
祭壇の上に座っていたのは、悪魔の出現にも
驚く様子も脅える様子もなく、ただ平然と此方を眺めている
一人の人間。

年の頃は三十程、ウエーブのかかった翡翠色の豊かな髪を掻き上げ
艶っぽく微笑みながら、自然に無駄な色気を振り撒いている・・・男。
そう、このガタイの良さは、どう見ても女性には見えない。
寧ろ引き締まり、戦士の様にも見える。
  
一瞬、生贄を差し出すのが惜しくなった皇が、悪魔退治をする気なのか
とも思ったが、当の本人にはそんな様子も感じられないし
破魔の罠が仕掛けられている様な感じもない。

天真は、躊躇なく男に近寄ると睨みをきかす。  



「一体どういうことだ、事と次第によっては容赦ねーぞ」

「ヤレヤレ、魔界を治める魔王ともあろう方が
 そんな短慮では、いけないねぇ」

「・・・俺は魔王じゃない」

「おや、じゃぁそっちの君かい?」
 
「僕でもないんですよ・・・で、貴方はどういう方ですか?」

「私かい? 最後の生贄だよ、残念ながらねぇ」


  
剣呑な眼差しになる天真に構わずに、男は言葉を続ける。



「私は友雅、一応この皇国の第一皇子だよ。
 今朝、皇帝に呼ばれてね・・・突然生贄になれと言われたんだ」

 
その言葉は楽しそうで、辛辣さは微塵も感じられない。

  
皇帝の実子は、現在六人。

気障で飄々として享楽的な、第一皇子
武に優れ実直的で寡黙な、第二皇子
魔力に優れ合理主義な、第三皇子
知に優れ正義感に満ちた、第四皇子
感情豊かで繊細な、第五皇子
勝ち気で負けず嫌いの末っ子、第六皇子

そう生贄に捧げる筈の『第一皇女』が誕生していなかったのだ。



「だからと言って、誤解してはいけないよ。
 皇帝も最近まで次々と側室を召して、頑張っていたよ。
 ふふ、訳を知らなかったものだから
 私以上の好き者だと思っていたよ。
 で、仕方ないから男女の違いがあるけど
 第一皇子に白羽の矢が立った訳でね、さて、どうする?」

「どうするって、お前」



頭を抱える天真に、詩紋がぼそっと呟く。



「あかねちゃんには、丁度いいんじゃないかなぁ」

「詩紋、お前!」

「だって『女の子』を傷付けるの嫌がってたし
 この人なら、腕一本ぐらい無くなっても平気そうでしょ?」

「だからって、こんなヤツをあいつのトコに連れて行ったら!?」

「う〜ん、大丈夫だと思うよ。
 無理矢理なんてしようものなら、それこそ挽肉になるの
 目に見えてるしね。  
 万一そっちに転んでも、これだけリビドーに溢れてる人間って
 珍しいから、あかねちゃんの魔力アップになるよv」

「・・・お前、天使みたいな顔して」

「だって悪魔だもん、天真先輩って意外にロマンチスト〜w」

「んっだと!」



そんな二人のやり取りを、友雅は黙って聞いていた。

気障で飄々として享楽的な第一皇子。
・・・しかしその実、中々食えない切れ者なのだ。
元々、生贄になるつもりなど毛頭なかった。
ただ魔王がどんな者かと興味が惹かれ、見る為に此処に来たのだ。
様子を伺い話を総合すると、意外にも女性の様らしい。
  
人知の及ばない、魔界を取り仕切る女王。
強大な魔力を持ち、さぞかし妖艶な美女なのだろうと
しかも『女の子』を傷付けるの嫌がる様な
悪魔らしくない心優しい部分もあるとは
否が応にも、興味が高まる。

ただ、少年がちゃん付けで呼んでいるのが若干気にかかるが
あえてそこは黙殺する事にした。



「さて、私は一体どうしたらいいのかな?」

「だーーーーーーーーーーっ!
 しょうがねぇ、コイツを連れて行って、契約済ませちまおう!!」

「後は、あかねちゃん次第だね」



魔力が三人を包む、次の瞬間には先程までの喧騒も人影もなく
祭壇がその役目を終え、鎮座しているだけだった。










人間界では見た事もない様な、黒光りする鉱物で作られた重厚な城。

友雅は、長い渡り廊下を一人で歩いていた。
目的の場所は、突き当りにある魔王の寝室。
先程の二人とは、廊下の入口で別れていた。



「いいか、逃げたりしたら殺すからな」
  
(逃げる? 女王の顔も拝まないなんて勿体無い事は出来ないさ)


「一昼夜、魔王様と二人で過ごして貰います。
 その間の貴方の処遇は、魔王様の胸三寸ですので
 生き延びたかったら、大人しくした方が身のためですよ」
   
(オヤオヤ、この私と女性を一昼夜も部屋に閉じ込めるとは・・・ねぇ)



睨み殺しそうな表情と、何処か黒さを感じさせる笑顔を
思い出していると、緩々と口角が上がる。
目の前には、壁と同じ重厚な黒の扉。



「さて、鬼が出るか蛇が出るか」



扉に手をかけると思ったよりも軽く開き、室内は一転
そこは淡い白の世界。

シルクを織り成したような、微妙な光沢のある壁に
天蓋付きのベッドに家具の数々。  
そしてソファーに一人の少女が座って此方を眺めていた。
桜色の髪に新緑の瞳、白い肌がより一層映える
黒のラバービスチェ風の衣服。
  
互いに驚いていると、少女の方が先に動いた。



「あれっ? 第一皇女って聞いてたんだけど?」

「残念ながら『皇女』が産まれなくてね。
 第一皇子である私が生贄に選ばれた訳だが
 ・・・君は、魔王の侍女か何かかい?」

「私が魔王です」

「はっ!?」



友雅は目の前の少女を上から下まで不躾に眺める。
十代半ばにしか見えない、可愛らしい少女・・・彼女が魔王!?
先程までの自分の妖艶な美女のイメージとは程遠い。

・・・いや悪魔なのだ、見た目が若いだけで年上かもしれない・・・



「・・・歳は?」

「? 産まれて16年ですけど」

「・・・」



大きく溜息を零し、ソファーに座り込む。
いくら女好きで節操なしの浮名を流していた男でも
明らかに守備範囲外の年齢だ。
好き勝手にイメージしていた、自分の思想が浅はかとはいえ
まさか一癖も二癖もある悪魔の総大将である魔王が
こんな幼い少女だなんて   
折角、魔界まで来たのにその落胆は隠せない。

その様子をあかねは、別の意味に受け取った。
自分が若いから契約を果たせないのではないか、と言う風に


 
「あのっ、第一皇子さん」

「・・・『友雅』・・・そう呼んでくれるかな、魔王の姫君」

「あっ、私は『あかね』って言います。
 友雅さん、大丈夫です。
 若いけど、初仕事だけど、無事に契約を済ませますから!
 えと、利き腕ってどっちですか?」

「利き腕? 右手だけど」

「じゃぁ、左手を」



あかねは友雅の左腕を取ると、何か魔法をかけた。
やんわりと暖かい魔力が腕を包む。


 
「痛くない様に、魔法をかけましたから。
 あの契約の証として、小指の先だけ食べますね」



そう言うと、小指の先をパクっと口に咥える。
唇が触る感触、歯が当てられる感覚
・・・魔法の所為かもしれないが、余りにも心地良くて        
その様子をじっと見ていると、春を思わせる新緑の瞳と
正面からかち合った。
魔王だという少女の、何の穢れもない真摯で真っ直で
今まで見た事のない美しい瞳。
目が離せず、思わず魅入ってしまった。


フト悪魔に関する噂が頭を過ぎる。

悪魔は様々な手段を用いて、人間を魅了し虜にしてしまうのだと言う。
一度そうなると、もう逃げ出す手段は存在しないのだと。

何を馬鹿なとその時は思っていたが、あながち間違いじゃないかも。

そんな事を朧げに考えながら見ていたのだが
一向に契約は果たされなかった。
その内、あかねがボロボロと泣き出してしまったのだ。
女性に泣かれる程、面倒な事はないと普段なら流してしまえるのだが
何故か今日は必要以上に慌ててしまう。


  
「まっ魔王の姫君、どうしたんだい?
 私の指は、食べられない程不味いのかな」

「ふぇぇぇぇぇぇぇんっ! ヒック、不味いんじゃないの
 たっ、食べなくちゃいけないんだけど、ヒックっ
 どうしても、噛み切れないんだモン!!」

「何なら、私が切り落としてあげようか?」

「きっ、切り落として貰っても
 私、ベジタリアンだから、食べられないんだモンっ!
 食べなきゃ、契約が果たせないのにぃ、なのにぃ!!
 ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっっっっ!!!」

  
  
幼子が泣きじゃくるような様が、余りにも可愛くて、いじらしくて
無意識に胸に抱締めていた。
暫く、ポンポンと背中を叩いていたら、落ち着いてきたのだろう
泣き声が次第に静かになっていった。


悪魔に魅了された人間がどうなるか。
食われるか? 喰われるか? どちらかだという噂。
どちらにしろ死は免れないらしい、それならば



「・・・悪魔にはもう一つの『喰べる』方法があるのだろう?
 そっちじゃ駄目なのかい」

「えっ! 友雅さん、その方法を知ってるんですか!?」

「君は知らないの?」

「私は産まれてずっと、誰も来ない森の中で過ごしてたんです。
 今回、魔力が高かったから魔王に選ばれたけど
 本当に何も知らなくて
 天真君も詩紋君も、教えてくれなかったし
 ・・・あの、教えてもらえますか?」

「後悔するかもしれないよ」

「でも、他の悪魔は知っているんでしょう?」

「まぁ、悪魔だけじゃなく人間や天使も知っているだろうケド」

「なら、尚更です。
 魔王なのに、知らない事があるのは駄目だと思います!」
  


腕の中にいるのは、優しくて純真で真っ白な
強大な魔力を持った魔王。
抱締めているのは、ずるくて邪意で裏がある
何の力もない卑小な人間。 

何も知らない少女を、自分の色に染め上げる悦び。
生命をかけた恋、人生最後がそういうのも悪くない
と、らしくない考えに支配される。
コレが悪魔の魅了か



「仰せのままに」



友雅は、親指の腹であかねの唇をなぞると、そっと唇を重ねた。
ただそれだけなのに、ゾクリとした快楽が背筋を駆け上がる。
  


「口を開いて・・・舌を出して・・・そう、そのまま感じてごらん」



あかねは言われるまま、その指示におずおずと従う。
舌を口腔内に滑り込ませ、上顎や下顎をなぞり流離いながら
戸惑う彼女の舌に、自分の舌を絡ませる。
時間をかけた長いキスに唾液が溢れ出し、口の端から落ちていく。

名残惜しげに離れると、熱を孕んでトロンと蕩けそうな眼差しで
此方を見詰めていた。 
その表情は紛れもなく魔性の女のモノ。
キスだけでコレとは・・・思わず生唾を飲み込んでしまった。



「・・・今のが、食べる事?」

「ふふ、まだまだ、これは挨拶みたいなものだよ」



横抱きに抱きかかえ、場所をベッドに移動する。
全ての衣服を脱ぎ捨てると、惜しげもなくその裸体をさらす。
無駄なく鍛え上げられた逞しい体が露になり
さて彼女の反応は?と思えば
視線を逸らすでもなく、照れるでもなく
じっと不思議そうに、そのモノを眺めていた。



「そんな風に凝視されると、流石の私でも恥ずかしいんだけどね」

「あっ、ごめんなさい・・・でも、ソレ何?」

「今から、君が『喰べる』モノ
 さぁおいで・・・咥えて舐めてごらん、歯を立てちゃ駄目だよ」



引かれ、促されるままソレに手を沿え、言われるまま咥えてみる。
が、大きさがあるので、とてもじゃないが全部は口に入りきらない。
取り合えず、先頭の部分だけをチロチロと舐めてみた。

苦かったり、酸っぱかったり、塩辛かったり
・・・はっきり言って不味いのだが
それでも肉を食べるよりは、あかねにとって遙かにマシだった。
  


「そう・・・下からゆっくり、押さえつける様に舐め上げて」



傅くあかねの背に手を伸ばし、ビスチェの編み上げの紐を解き
その上半身を露にする。



「うん、上手だよ・・・咥えて、舌の先で突付いて」


 
スカートのホックを外し、摺り落とす。



「うっん、あっ・・・吸い付いて上下に動かして」



友雅の言葉に促されるまま、忠実にその刺激を暫く続けていると
次第に指示ではなく、荒い吐息が零れてきた。



「んふっ?」  


  
上目遣いに見上げてみれば
眉間に皺を寄せ、その端正な顔が苦しげに切なげに歪んでいる。  
しかも今、そんな表情を引き出しているのは、他でもない自分なのだ。
何故だか分からないが、その貌にすごく感じてしまう。

教えられた行為を、織り交ぜ緩急の強弱をつけ、更に刺激していく。    
稚拙ながら、それでも段々と巧みになっていく技巧。



「うっ! んっ・・・うん、いいよ・・・嗚呼、あっ」



直接的な刺激の快楽で言えば、とても及第点には遠く及ばないが
あかねが口淫をしてくれている、それも自分の意思で
そう思うだけで、急速に追い詰められ不意に射精感が襲ってきた。



「くうっ!」



第一波、何とかその波をやり過ごす。
流石に今この状態で、あかねの口に出す訳にはいかない。
暖かく柔らかい口内に放ちたい、という欲望がないわけじゃない。
出してしまったら『喰べられた』事になるかもしれないから

死を覚悟しているのだ、折角なら存分に彼女を味わいたい。
  
それと、経験豊かな男のプライドも少々・・・いや、かなり



「姫君・・・もういいよ、有難う」

「ふっんっ・・・もういいんですか、コレで食べた事になるの?」

「もう少しかな、もう姫君は何もしなくていいよ。
 私に任せて、素直に感じていればいいから」

  
 
友雅はゆっくりとした手つきで、あかねを抱き寄せると
愛しげに唇を落とし、頬、首筋へと流れていく。
少女らしく弾力のある双丘、しなやかな女性らしい曲線
瑞々しく張りのある四肢、甘く香り立つ、白く上質の絹のような肌。

流石は、魅惑の悪魔の肢体というべきか?
それとも魅了された、愛しい人の姿態というべきか?

今となっては、どちらにしろどうでもいい事だ。


指に、掌に、唇に、舌に、全神経を集中させ
じっくりと時間をかけて、あかねを堪能する。
彼女の全てを自身の魂魄に刻み付ける様に 

初めあかねも、触られる感触がくすぐったくて
笑みを零していたのだが、耳やら、首筋やら、腕やら、脚やら
腹やら、背中やら、胸やら、お尻やら
じっくりと執拗に弄られれば、未知で不思議な感覚が意識を支配し
自然と聞いた事もないような声が漏れ始める。


 
「あんっ、やっぁあっ・・・あぁ」

「良くなってきた?」

「わからっ・・・あぁん!」


 
揺れ始めた少女を満足げに見つめ、触れるだけの優しい愛撫から
揉みしだいたり軽く噛んだりする、強い目の愛撫に変え更に翻弄する。



「・・・さて、そろそろ味見を」

「えっ?」

 

クッと足が大きく開かれる感覚に、一瞬だけ正気に戻る
が次の瞬間には、今まで以上に翻弄される事に
  


「きゃぁぁぁうぁ、あぁぁぁぁっ!」


 
華は既に蜜で濡れそぼっていて甘く香り
今や遅しと獲物を待ち構えていた。
当の獲物は、抵抗する気など微塵もなく存分に蜜を味わう。
押し開いて、拡げて、咲かせて、花弁の一枚一枚を丁寧に
胎も、外も、小さな花芯も、全てを飲み尽くしそうな勢いで
しかし飲めども飲めども、懇々と沸き出でる泉の如く
蜜が尽きる事はない。
 


・・・食ベラレテイルノハ、一体ドッチ?・・・



何度も何度も絶頂に飛ばされ、白く霞んだ思考が
ぼんやりとそう警告する。
訳が分からなくなって、堪らなくなって、目に涙を溢れさせながら
口を開けば、それは既に意味のある言葉ではなく、唯の嬌声。
  
そっと涙を拭われ朧げな視線の先には、艶やかに微笑む友雅の顔。



「あかね、私を『喰べて』くれるね」


  
自身を蜜壷に宛がうと、挿入を開始する。
悪魔は行為自体を食事とする事があるので
侵入を阻むモノはついていない。
散々慣らし焦らした効果もあり、程なく全てを収める事に成功した。

暖かく優しく適度なうねりをなし包み込まれる胎は
今までのどの経験とも違い、流石の多くの武勇伝を流した男でも
堪えられるものではなかった。
正に悪魔の媚薬そのモノで、友雅は我を忘れ
最初から激しく何度も何度も突き上げる。
 


「あっ! やぁっ!! 激しっ!!!」
 
「ぁっ・・・すまないね・・・止められないのだよ」

「んっ うんんっ」


 
奥深く楔を打ち込まれながらも、掠れた声で囁かれ
貪る様なキスをされては、理性が保てるわけがない。



何かの箍が外れる気がする。


悪魔の本性が表面化する。


女の本能が湧き上ってくる。


堕ちる恐怖と翔ぶ快楽・・・気が狂いそうだ。




「あぁぁぁぁぁぁぁ! だっ駄目ぇぇぇぇぇぇっ!」



腰を押さえつけられ、今まで以上に奥深を穿たれた
獲物を逃がすまいと胎が痙攣し、奥へ奥へと収縮する。



「うぁっ、あかねっ・・・『喰べて』・・・くうっ!」

「ああっ!っあぁぁっっっっっっっ!!」



何か熱いモノが胎で爆ぜた。
その瞬間、躰中に電気が走り、凄い勢いで『何か』を
喰らい尽くす気がして、真っ白な何かが湧き上り





思考が弾け飛んだ。















渡り廊下を一人で歩いて来た詩紋は、部屋の前で軽く溜息をつく。


  
「もう、天真先輩ったら
 『あかねちゃんが泣いてる姿を見たくない』からって
  僕だけ行って来いなんて・・・勝手なんだから」


  
優しい彼女が、生贄の王子を傷付けて泣いてないか?
ベジタリアンの彼女が、無理に肉を食べる事で泣いていないか?
万一『喰べる』方向になって、彼を消滅させてしまって泣いていないか?



「僕だって、泣いているあかねちゃんなんて見たくないのに」


  
扉を軽くノックする。
暫くして体にシーツのみを巻きつけて、憔悴しきった
あかねが顔を出した。
つい先程まで泣いていたのだろ、眦が紅く頬は涙に濡れている。

・・・そして、彼女の魔力は確実にアップしていた・・・



「・・・詩紋君」


 
その様子を見て『喰べる』方向になってしまったと確信した。
悪魔が人の精気を捕食するのは、ままある事。
その為に人が消滅してしまうのも、仕方がない事。



「あかねちゃん・・・無事に契約は成されたみたいだね・・・っ!?」



ゆっくり言葉を選んで紡いで、顔を上げてみれば
余裕の笑顔の、でも何処か睨んだ様な眼差しの
生贄の第一皇子の姿が
その彼が、あかねを背後から抱き寄せ扉を閉め鍵を掛けてしまった。



『ふふふ、あかね、私はまだ喰べられていないよ』

『やっ、友雅さん・・・もう許してぇ』

『先程、この可愛らしい口で私以外の男の名を紡いだね』

『だって、それは』

『お仕置きv』

『えっ、やっ、あっ、あぁぁぁぁぁっ!』
  



 



「・・・」



詩紋は頭を捻りながら、渡り廊下を戻っていく。



「おぅ、詩紋どうだった!」

「契約は無事終わったみたいだけど・・・啼いてた」

「あっちゃー、やっぱかよ」

「啼かされてた・・・と言った方がいいのかな」

「はぁ!?」



訳が分からんといった感じの天真を他所に
詩紋は、ふとある事実を思い出す。


  


(そう言えば、前魔王様の魔力が弱くなっていたから
九番目の生贄の王女って、暫くして人間界に帰されたんじゃなかったけ
って事は、もしかして現王族って、前魔王様の血を、悪魔の血を引いてる!?)


  
渡り廊下を振り返り、多分既に数回戦目であろう事を思い返す。



「悪魔と人間の混血かぁ・・・あかねちゃん大丈夫かな」

 











「友雅祭 Situation Love 2007」出品作品  御題「悪魔と生け贄」


パレレル楽し(≧▽≦)〜v

いやまぁ、普通は「友雅氏が悪魔であかねちゃんが生贄」なんでしょうけど
「あかねちゃんが悪魔で友雅氏が生贄…最後には立場逆転だな(^_^;) 」
の自分のコメントの通りに作ってみましたv
折角なんで、あかねちゃんには「魔王」まで登り詰めてもらってw


そして、何故かパラレルでは段々「黒化」する詩紋君。


しかし「ご奉仕」描写はすんごい苦手 orz
書いてる最中、食い千切ってしまえ!と何度呟いた事か( ̄д ̄lll)

姫君主義 / セアル 様