砌 〜みぎり〜

= Happy Birthday!! =



※いわゆるゴムや、切羽詰まった友雅さんが出てきます。平気な方はスクロール↓

























  トイレ友達、ソレは女子高生にとって必要不可欠なモノ。
  何故なら色々と便利な事もあるし、聞かれちゃまずい密談も交わせるし。



  「あっ」



  個室から聞こえてきた小さな悲鳴、ソレを有能な親友は聞き逃す事はなく。



  「どうしたの、あかねちゃん」

  「蘭ちゃん、ごめんアレ持ってない?」

  「あるよ、ちょっと待って・・・はい、落とすよ」


  
  ポーチから『アレ』を1つ取り出すと、上から投げ入れると
  暫くして、あかねが個室から出てきた。


  
  「ごめんね、ありがとう」

  「28日?」
  
  「30日なんだけど、ちょっと早かったから持ってなくて」


 
  手を洗っているあかねの後ろで、蘭は何やら指折り折って数えている。



  「ふ〜ん、おおむね順調なんだね。
   京ってそーゆーのアバウトじゃない、心配してたんだけど
   ヤツちゃんとゴム使ってるんだ」

  「・・・ゴム?」


  
  頭に?マークを付け首をかしげる親友に、正式名称を耳打ちすると
  瞬時に顔が真っ赤に染まる。



  「そんなの使ってないよっ!」

  「えっ!何!!もしかして、ヤツあかねちゃんに使わせてるの!?
   ピルとか!!??  まさか、まさかっ『生で外出し』とか
   ふざけた事ぬかしてんじゃないでしょうねっ!!!!!」


  
  黒龍さえ発動させてしまいそうな怒涛の勢いに、慌ててフォローに入る。



  「・・・まだ、してない・・・」

  「えっ、でも、こっちに戻ってきて1ヵ月とちょっと過ぎてるじゃない?
   てっきりもう、とっくの昔に食べられたとばかり!?」  


 
  蘭の評価もぞんざいなものだが、それも致し方ないだろう。

  京での戦いの後、あかねは現代に戻ってきていた。
  勿論、天真と詩紋、無事に取り戻した蘭、そして友雅を連れて。

  龍神の計らいか、時間が経った様子は全く無く
  友雅にも現代での居場所と記憶と知識が与えられていた。
  大学までの学歴、モデルという職、現代を生活していけるだけの
  戸籍、預貯金、等々
  そう現代に来て困るであろう事は、全てクリアされていたのだ。

  その気にさえなれば、器用で何でもそつ無くこなす友雅の事
  どういう手段を使ったか知らないが、年齢のハンデをものともせず
  あっという間に、あかねの両親に取り入り気に入られ
  婚約者と言う立場をもぎ取った。

  このあまりの対応の素早さに、舌を巻くのも当然の事だろう。

  おまけに天真達を牽制する為に、わざと見せ付ける様に
  あかねに抱きついたり、キスしたりしようとするのだ。
  当然あかねが恥ずかしがるので、ソレは未遂になる事が多い
  しかし不意打ちなどは防ぎ様も無いのが現実で、十中八九の確信犯。

  そんなヤツがっ!

  未だに手を出していないなんて!? 

  普通では考えられない!!



  「『御預け』の躾中?」
  
  「・・・犬じゃないんだから・・・」

  「仕事が忙しい・・・って訳でもないわね」


  
  そう仕事を抜け出して、あかねに逢いに来て
  マネージャーに引っ張られて仕事に戻る、常習犯なのだ。
  お蔭で、あかねは勿論、蘭の携帯にまで
  マネージャーのテルナンバーとアドレスが入ってる程。

  友雅のマンションで、啄む様なキスを受けた事だって何度もある。
  ふわふわと、意識が飛ぶ様な感じになって
  あかねが焦点の合わない目で見つめると
  きまって友雅は、少し寂しげに微笑んでそっと抱きしめるのだ。

  そう、そこまでの関係。 

  友雅は京でアレだけの浮名を流してきたのだ。
  しかも、そのお相手は名立たる姫や才色兼備の女房達
  そんな女性達と高校生の自分など比べ様もない。
  分かっているのだ、そんな事は・・・そうあかねは思っていた。



  「きっと友雅さんにとって、私はまだまだ子供なんだよ」



  少々、憂いを含んだ顔で微笑むあかねに蘭は溜息を零した。


  (・・・あの視線は、絶対!子供を見る目じゃないけどな・・・)






 砌 〜みぎり〜






  そんな会話を交わした日から、約3週間。

  明日は現代に戻って来て、最初にして最大のイベント6/11『友雅の誕生日』
  運良く土日で、両親にもちゃんと家に行く許可を貰ってある。
  京では生まれた日を祝う習慣がなかったから勿論、内緒。
  マネージャーにも頼んで、スケジュールを空けてもらっている。
  プレゼントも用意したし、今からマンションに行って料理を仕込めば
  友雅が帰ってくるまでには、全て完了しているだろう。

  アレして、コレして、と頭の中でシュミレーションをしていると


   〜♪


  携帯にマネージャーからの着信音が鳴った。



  「はい?・・・ええっ・・・・・・・・・・・・それで、容態は!?
   分かりました、すぐ行きますっ!!」








  友雅さんが、倒れたっ!




  目の前が真っ暗になりそうになりながらも
  取るものも取り合えず、急いでマンションへと向かった。

  









  琵琶を爪弾きながら、気だるそうに目配せをすれば

  色艶やかな蝶達が、御簾の後ろで衣擦れの音とともに動くのが分かる。

  今宵はどの蝶と閨を過ごすのだろうか?

  徒然で徒爾で無為で無聊で『情熱』の欠片もない、虚しく儚い空虚な日々。

  『情熱』? 何故そんな言葉が私の中にあるのだ?

  『人生とは淡雪の様なもの』だった筈だろうに?



  ・・・だった?


       額にヒヤリと冷たい感覚が当たる。



  ・・・あわゆき?


       温くなると、また冷たい感覚にすり返られる。



  ・・・ゆき?


       サラリと心地よい感覚が、体を撫でる。



  ・・・しらゆき?・・・白雪!?


       優しく暖かい気配が、離れて行く様な気がする。



  ・・・み・・・こ・・・神子殿・・・あかね


       行くな! 行くなっ!! 行かないでくれっ!!!










  「っ!」



  友雅は、はっと飛び起き覚めやらぬ目で辺りを見回す。
  10畳ほどの部屋に、大きめのクイーンサイズのベッド
  窓には分厚い遮光カーテンが引かれ、時刻は光の具合では分からないが
  枕元のサイドテーブル上のデジタル時計は『22:05』と示している。
  見慣れない房・・・いや違う、ここが今の自分の部屋・・・の筈だ。
   
  軽く頭を振ると、パサリと濡れたタオルが手の中に落ちてきた。
  


  「・・・これは・・・」



  その時、部屋のドアが開いて洗面器を抱えたあかねが入ってきた。
  ベッドの上に起き上がっている友雅を見付けると
  洗面器をサイドテーブルにおいて、そっと額に手を当てる。



  「友雅さん、熱の所為で撮影中に倒れちゃったんですよ、大丈夫ですか?
   良かった、大分熱も下がったみたい。
   お医者さんに来てもらって、解熱剤と栄養剤を打って貰いましたから。
   ・・・過度なストレスが原因の風邪ですって・・・」



  ホッと安堵しながらも、申し訳なさそうな表情になり、だんだんと項垂れていく。



  「ごめんなさい、そんな倒れるまで友雅さんの不調に気が付かないなんて
   急に現代に来て、無理させてたんですよね。
   京ではあんなに良くして貰っていたのに、手助けにもならないなんて・・・私」 

  「・・・あかね・・・」

  「はい」



  囁く様な声に呼ばれ顔を上げてみると、少し寂しげに微笑んだ友雅の表情
  だが、今日は目の奥に違うモノを感じた。



  「嗚呼、もう駄目だっ!」



  行き成り、友雅はあかねの唇を塞ぐ。
  それは、いつもの啄む様な柔らかなモノではなく
  舌も唾液も意識も理性も、呼吸さえも奪ってしまう
  喰らい付く様に総てを貪るモノ。
  咄嗟の事で何の準備も身構えもしていなかった、あかねは唯々驚くばかりで
  なすがままに翻弄され、思考は完全に停止状態。

  嵐の様なキスからようやく開放されても、縋る様にきつく抱締められ
  身動き一つ出来ない。



  「あかね、あかね、あかね
   すまない、もう待てそうにないよ!今すぐ君が欲しい、君を抱きたい!!」
  
  「とっ、友雅さん!?」

  「分かってはいるのだよ。
   私の様な男が君の側に居られる事だけでも、満足すべきなのは
   だからせめて、この世界で君はまだ子供と言われる年齢で
   大人と言われる年齢まで待とうと思った。
   恐らくその為に、龍神も私に現代の常識を与えたのだろうから。
   でも君は魅力的な女性で、子供だなんて思えなくて
   だけどもうこれ以上はっ!・・・お願いだ、拒まないで・・・」      
    


  今まで一度だって見た事がないほど、切迫した態度。
  しかも、何故か悲壮感さえ感じられる。
  何がそこまで、この人を追い詰めたのか?
  全くもって見当も付かなかった。



  「一体どうしたんですか?」

  「・・・夢を見たのだよ」

  「夢?」

  「そう、君と出逢う前、八葉に選ばれる以前の毎日を
   緩慢で逸楽で退屈な日々」

  「あっ・・・あの、ごめんなっ!」



  やはり、現代に来たことを後悔しているのだろうかと
  思わず謝ろうとした唇を、友雅は瞬時に己が唇で塞ぐ。  
  その言葉は必要ない、そう言わしめるために



  「白雪の存在は知らない筈なのに、心の中の焦燥感が酷く恐怖で
   目が覚めて、夢か現実か分からなくて
   ・・・こうして、抱締めている君が夢ではないかと思えてしまって・・・」

  「・・・」

  「不安なのだよ。
   君が、夢の存在ではないのか?
   白雪が、現実に存在しているのか?
   あかねが、もし居なくなってしまったら?
   私は気が狂ってしまう、生きる意義を失ってしまう」

  「・・・友雅さん」

  
  あかねは、やんわりと友雅の頭に手を添えると、胸に耳を押し当てた。



  「私の鼓動、聞こえます?」

  「・・・あぁ、聞こえるよ」

  「ねっ、私は此処に、友雅さんの側に居るでしょう」

  「・・・うん」



  ぐずっている幼子をあやす様に、優しく髪を梳きながら頭を撫でる。

  どの位そうしていたのだろうか。

  何事にも飄々として優雅で気障な大人だと信じ込んでいた恋人の
  予想だにしていなかった、意外な一面を垣間見てしまった事に  
  思わず、優しい笑いが零れてしまう。



  「でも、友雅さんがそんな風に思っていてくれたなんて
   考えもしませんでした」

  「・・・あかね、鼓動が早くなったけれど、何故?」



  目が覚めてきたのか、若干の余裕が出てきたのか
  少しだけ口角を上げ、答えの分かりきった意地悪な質問を投げかける。


  
  「も〜、嬉しいからですよ」

  「・・・こうされても?」

  「!」


 
  友雅は口だけで、器用にブラウスのボタンを外していった。
  ボタンが外される度、白い肌が露になる度、否応なしに鼓動が早くなっていく。
  パサリとブラウスが下に落ちてしまった瞬間には
  恥かしくて、気が遠くなってしまいそうだった。

  ・・・それでも、拒絶や否定の言葉は頭にさえ浮かばない・・・


  
  「ちゃんと着けるから・・・いいかな?」



  艶を含みながらも、恐々と伺うような声色に視線を落としてみれば
  いつもの、少し寂しげに微笑む表情。
  でもその瞳の奥には、男の本気が垣間見れる。

  その獣の視線に、少女としての危機感と女としての昂揚感
  相反する二つの本能が、ゾクリと背筋を駆け上がっていく。

  何て答えていいか分からず、今のあかねには小さく頷くのが精一杯だった。









  行為は、まさに『喰べられた』と言って過言ではなく


  髪一筋から、足の爪先まで、外も、中も、隅から隅まで


  涙も、汗も、水桃蜜も、不安も、恐怖も、待望も、欣幸も、痛みも、悦楽も


  『あかね』を構成する物質・感情、その全てを余すところなく


  代わりに自身を刻み付ける、紅い華として、楔として




  贄の兎を、己が激情で殺してしまわぬ様に、白虎は想いのままに捕食した。
  









  胸元に抱締められ、愛しげに髪を弄ばれている感覚を心地よく思いながら
  事後の余韻で、ボーっとした理性が


  
  (友雅さん、ちゃんと用意してたんだ、使い方まで知ってたし
   ・・・本当にハタチまで待っててくれるつもり、あったのかな?)


  
  などと、今となっては確認し様もない事が頭に浮かぶ。



  (・・・ハタチ・・・んっ!? 誕生日!!??)



  体を捻って腕から逃れ、慌てて時計を見ると『23:59』

  ホ〜っと全身の力が抜ける、コレもサプライズの1つだったのだから。
  心の中で秒読みをしていると、あかねの様子の変化を訝しく思ったのだろう
  友雅が心配げに声をかけてくる。



  「大丈夫かい、痛みが酷い?」

  ( 9・8・7 )

  「やはり、少々無理をさせてしまった様だね」

  ( 6・5・4 )

  「ねぇ、此方を向いてくれないか」

  ( 3・2・1 )

  「あかね」

  ( 0 ) 



  時計が『0:00』を刻んだ瞬間。
  友雅の方に振り向くと、照れながらも頬に軽くキスをし
  飛び切りの笑顔で微笑んだ。



  「友雅さん、お誕生日おめでとうございます。
   生まれてきてくれて有難う、出逢ってくれて有難う、選んでくれて有難う。
   そして一緒に来てくれて、側に居てくれて有難う。
   大好きです! これからもずっと一緒に居て下さいねv」

  「・・・あっ・・・」

  「こっちに来て、色々バタバタして、ちゃんと言えてなかったから
   友雅さんのお誕生日に、一番最初に言っておきたかったんです」
 
  「・・・か・・・ね・・・」

  「京にそういう風習がないのは分かってるけれど
   どうしても・・・っ!」



  あかねは、二の句を継ぐ事が許されなかった。
  息継ぎが不可能になりそうな位、何度も何度も友雅に口付けられたのだ。
  それこそ顔中にキスの雨が、惜し気もなく降り注がれる。



  「どうして君は、そう私の情熱を掻き立てる術を心得ているのだろうねぇ。
   嬉しいよ、本当に
   あぁ、もう今更『さっきの言葉はなしです』なんて言っても駄目だからね。
   『ずっと一緒に居る』それは私にとって、何よりの贈物だよ。
   こちらこそ、有難う・・・あかね」

  「本当は、料理の準備とか、誕生日プレゼントとか用意していたんですけど
   『友雅さんが倒れた』ってマネージャーさんから聞いて
   慌てて来ちゃったんで、全部家に忘れてきちゃったんです・・・ごめんなさい」



  余程、前もって準備していたのだろう。

  肩を落とし項垂れる様子さえ、眩暈がしそうなほど凶悪なまでに愛おしく
  そんな前から、気にかけてもらっていたという事実が何よりも嬉しいのだ。

  それでも、友雅の所為で用意が無駄になった、という事じゃなく
  自分が忘れて来たという事実を悔いて謝る。


  ・・・そんな必要など、どこにもないのに・・・











 

  本当に優しい白雪、心の底から汚れきった男には勿体無い程の

 
  白さが美しければ美しい程、穢れはその闇を欲深く染めるモノ


  『光が或る処には、必ず影が或る』だが


  『暗黒の闇の中に、光は存在し得ない』のに


  それでも闇は光を求める、もっと、もっと、もっと、もっと、際限なく

 
  放さないよ、君が嫌といっても、絶対に




  あんな夢は二度と御免だ










  友雅はしょげているあかねの顔を至近距離から覗き込んだ。



  「ねぇ、誕生日プレゼントはくれるの?」

  「勿論です。 今度、会う時に持ってきますね」

  「今、欲しいな」

  「えっ!? ・・・じゃぁ、一度取りに帰りましょうか?」  

  「今すぐに」



  言葉の真意を測りかねている隙を見て、押し倒す様にベッドに組み敷く。
  その瞳の奥には、先程と同じ肉食獣の様な光が



  「まっ、まさか・・・さっき、したばかりなのに!?」 

  「ん〜我慢するのは、私の健康に良くないと今回思い知ったし」

  「!」 



  もしかして、ヤバイ状況なのでは!?と焦り始めたあかねに
  友雅はサイドテーブルの引き出しから『何か』の箱を片手で引っ張り出し
  目の前で軽く振ってみせながら、満面の笑みでトンでもない一言を



  「まだ沢山あるから、いくら私でもそう簡単には使い切れないよv」

  「!!!!」







栄養剤ではなく、鎮静剤を投与してもらうべきだったと
深く後悔した、瞬間だった。






この後、無茶に体力を消耗させられた所為で、風邪を貰ってしまい
心配して見舞いに来た有能な親友に、刻み付けられた『紅い華』を見られ、全てがバレて
病原菌に雷が落ちたのは、ちょっとした後日談。








ギャク落ちで、色気も艶もあったもんじゃねー(^_^;)
書いてる本人は、楽しいケドw

誕生日プレゼントは、あかねちゃんv・・・でも、若干フライング
ただ現代Verなので、きっちり着けて頂きます!・・・何をって?ねぇ(#^.^#)ゴショゴショ
一応、某計算方式で安全日には設定したけど

過度なストレスって、どんだけモンモンと!?w
でも現代に来て2ヶ月、京を入れても5ヶ月・・・アンタ節操なさスギorz
その反動で、一晩で一箱使い切られた日にゃ
あかねちゃん、死んじゃいますがなΣ( ̄ロ ̄lll)


ここ暫く、ちょっと余裕かましたヤツばっかりだったんでヘタレ割り増し〜♪
で、やっぱウチのヤツは『キス魔』
・・・だから、風邪うつっちゃうんだってば・・・
姫君主義  / セアル 様