ゲームの時間 |
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=友雅なのに早漏!?= |
「やめ…やめてっ!!」 「やめて?そんな心にもない事を言う唇なら…塞いでしまおうね?」 「いや、いや!やめ──んぐ、ぅう…ん…」 ボロボロと大粒の涙が零れた。 先ほどまで振り回していた両の腕は、今まさにあかねの唇を食い千切らんばかりの烈しさで貪る男の、大きな掌によって戒められて身動きが取れない。 変わりにバタつかせた脚も、彼の脛が器用に押さえつけ、じりじりと隠された秘所を暴いていく。 「ん、んぅ──んぅぅ…」 無理矢理に奪われる深い接吻を首を左右に振って解こうとするが、それさえも予想していたかのように、長くしなやかな指で顎をつかまれる。ほんの刹那の間、自由になった左腕で反撃しようとしたが、戒められていた力によって痺れて使い物にはならなかった。男との左手によって両手首を一纏めに捻り上げられ、接吻への抗議だけでない呻きが漏れる。 執拗に口腔を嬲り上げていく舌先。 我が物顔で蠢くそれを噛み切ってやろうとした所で、男の膝に秘所を、ぐり、と刺激されて目を見開いた。 眼前にある彼の瞳は、至極可笑しそうに細められている。 「舌を噛み切る?ふふ、それもいいだろう。だがね、その時には…熱く燃え始めこの身体を、どのように鎮めるのかな?」 互いの唇を繋ぐ細い銀糸の先は、どちらのものともつかぬ唾液に、てらりと光ってあかねの視線を引き寄せる。 それに気づいた男は、ことさらゆっくりと、そしてあかねを煽るように唇を舐めた。 ひくり 腰に電流が奔る。 体験したことの無い…いや、彼にしか感じたことの無い、それ。 自分自身によって幾重にも戒めていた鎖が、解けていく予感。 「ねぇ、神子殿。どうして欲しいの?火照ったその身を、どうしたら楽に出来る?言ってご覧」 「──はな、して…。友雅、さん…も、やめて…」 「そう、やめて欲しいの?ならば、大声を出したらいい。いくら物忌みで人払いをしているとはいえ、龍神の神子が助けを求めれば…そうだね、君の忠実なる下僕ならば飛んでくるだろうさ」 「しも…べ…?」 「いつも私のことを、食い殺さんばかりの眼で見る、彼がね」 くつりと片笑む彼の瞳は、燃えるように熱く滾っていた。 それは嫉妬と呼ぶのだろうか、それとも、憎悪だろうか。 ただただ、彼の唇と指に翻弄され続けるあかねには、理解できるはずも無かった。 友雅はあかねの両腕をその身体の下に敷き込み、上から押しつぶすように圧し掛かる。そうして自由になった指先を、未だ彼女の秘所を守る微かな砦に滑らせた。 思わず漏れてしまう、鼻に掛かった甘い声。 うっとりと引かれた双眸を、これ以上見ていられなくてギュッと眼を閉じた。 「君は今日、こうなることがわかっていたはずだ。それでも私を呼んだのは…少なからず、期待していたからだろう?強引に組み伏せられ、奪われるならば…それもいい。いっそのこと、そうして欲しいと願っていた。違うかい?」 「そん、なっ…」 イヤイヤをするように首を左右に強く振ったのは、彼の言葉を否定するためではなく…下着に隠された小さな丘陵をなぞる指先に耐えられなかったからだ。 次第に篭っていく熱を発散することも出来ず、眼を閉じてしまったことで彼の指に集中していく意識を散らすことも出来ない。 「君は淫乱で、狡猾で、美しい女(ひと)だ。幼子のような顔で近づき、男たちを惑わし、そして虜にする。だが、決して誰のものにもならない。なんと…憎らしいのだろうね」 丘陵の形を確かめるように辿っていた指先が、下着の端をもぐって、ぐいと蜜壷に進入する。 「何を、やぁ──や、め…」 「だがね、私を他の者たちと一緒にしてもらっては困る。私はね、神子殿。君が泣き叫んで血を吐こうとも、月に帰すつもりなど微塵も無いのだよ。階を一歩一歩のぼっていくさまを、指をくわえて見ているなど…出来ようはずも無い。──残念だったね、神子殿。これまで…帰るためだけに頑張ってきたのに。こんな男を、その甘美な毒で虜にしたばかりに…帰ることなどかなわなくなった」 耳元で「かわいそうにね…」と吐息混じりに囁くと同時に、度し難い快感が全身を駆けていく。 「──っ……!!」 声にならない悲鳴を上げたあかねを見下ろしながら、彼の右手は未開の地を奥へ奥へと進み、縦横無尽に探索する。もう一方の掌は、はだけきった水干の下、珠のような汗を噴出した白い肌を辿り、彼女の理性を奪い去る手助けをしていた。 「んぁっ…ああぁっ──」 仰け反った喉元に喰らいつくように口付け、そして強く吸い上げられる。すでに逃げる力も失った彼女は、声を殺すことも出来ず、息も絶え絶えに喘ぐだけだった。 長く節張った指が、あかねの内部を緩やかに掻き混ぜ、全身を痙攣させて示される快感を探る。絶え間なく零れる吐息の合間に背を跳ね上げると、そこを執拗なまでに嬲られ、腰を浮かせるしかなかった。 彼の唾液と己の汗とで湿った胸元に、友雅の翠の黒髪が降り注ぐ。 大人と呼ぶには不足だが、発展途上にある霊峰を食み、先端の果実を含んで転がすたび動く髪でさえ、快楽を追うことに集中し始めた身体には責め苦となる。 淫猥な唇から漏れる水音が、鼓膜を侵し、彼の舌先がじわりじわりと抗うことの出来ない悦楽を与えていた。 花弁に擦り付けられる彼自身は、灼熱の塊となっていた。 ザッとあかねの額に汗が浮かぶ。 緊張と期待が綯い交ぜになった瞳が揺れ、友雅を捉えると、彼はうっとりと双眸を緩めて見下ろしている。 「大丈夫、恐がらなくていい。ただ、君に私を刻み付けたいだけなんだ。決して忘れられぬように…私なしでは、生きていけぬほどに…」 誰がこの男を、何事にも真剣にならない、情の薄い人間だと言ったのだろう。 彼はこんなにも熱く、そして烈しい。 かつて、宮中を騒がしていたような飄々とした雰囲気など霧散していた。 これが彼の、真実の姿。 大きく開かれた己の脚を、あかねはぼんやりと見つめていた。 羞恥や欲情などを感じるよりも先に、自分の置かれる状況を判断できずに呆然としているのかもしれない。 だがしかし、そんな静けさも長くは続かなかった。 ぐ、と友雅の腰が力強くあかねの身を裂く。 異物が押し込んでくるその衝撃に、内臓が押し上げられるような浮遊感を感じた。 全てを収めきった快感をやり過ごすために、柳眉を聳やかせて耐える友雅の表情は酷く扇情的で──あかねは下からそのさまを見上げながら、我知らず腰を揺らめかせた。 瞬間。 「──く、っう…」 友雅が低く呻く。 「── …」 「── …」 ふたりの間には、沈黙の帳が下ろされていた。 ぶるりと震わせた彼の四肢は、じっとりと汗ばんでいる。 あかねの内に、友雅の情炎が迸ったのを感じた。 「──ふぅ…やはり、君の中が一番心地いいね。君の香りが私を悦楽と幸福に導くのだよ…」 がくり 盛り上がっていたテンションと一緒に、あかねの首と言わず肩といわず…友雅によって抱えあげられていた脚までもが力なくその場に落ちた。 「導くのだよ、じゃない…」 大きく溜息をつくと、汗で張り付いた己の前髪を乱暴に掻きあげた。 「何でひとりで達っちゃうんですかっ。八葉と神子ごっこしよう、って言ったのは友雅さんじゃないっ」 「まぁまぁ。今回のことは事故のようなものなのだから、許してくれるだろう?愛しい白雪に責め苛まれて、耐えられるはずも無かろう。──つい、神子装束に興奮してしまったのだよ。私としたことがね」 「事故って…。まさか…ミニスカフェチなだけじゃ…」 「違うよ!どちらかと言えば…あかねふぇち、かな?」 軽く頬を染め、恥ずかしげに視線を逸らす様子に肩を竦めずにはいられなかった。 「何だそりゃ。ストーカーとか、やめて下さいよ?」 犯罪ですからね、犯罪! ビシリと人差し指を立てて言い募るが、結婚して四季が一巡する程度では、横文字を完全マスターしたとはいえない友雅は首をかしげる。 「すとぉかぁ?初めて聞く言の葉だね。なんだい、それは?」 「う…ん、仕事じゃなく、頼久さんみたいな言動を取る人、かな?」 「──?ああ、武士でもないのに『貴方は私の主』だの、『貴方を守るのは私の使命だ』などと言って、四六時中その後をついて回る者、ということか」 「みたいな人、って言っただけなのにそれだけ正確に理解出来るって、どうなの?」 自分で例に挙げておいて言うのもおかしいが、たったそれだけの言葉でそこまで言い当てられる頼久のことが不憫でならない。 「こうして身を繋いでいるのに、他の男の話しかい?随分と…つれないことを。これはもう、お仕置きだよね?」 「えー、だって…すぐ達っちゃうんだもん。せっかく気分が盛り上がってたのにさ」 「ほぉ、言ってくれるねぇ。──ではお望み通り、声が嗄れるまで啼かせてあげようか」 キラリと光った友雅の双眸。だが、あかねの瞳も負けじと強い光を帯びる。 「へぇ、やれるものならやってみて下さいよ?」 「よし、見ていなさい」 などと気合を入れても、その格好は何とも間抜けなもので…そう、彼らは未だ繋がったままだった。 どんなに怒鳴り合ったところで、あかねの体勢はまるで蛙がひっくり返ったかのようなもの。ちっとも怖いはずが無い。 「しかし…あかねも、随分と乗っていたようだね?──本当に…拒絶されているのかと、少々焦ってしまったよ」 先程までの痴態を思い出したのか、遠い瞳でくすりと笑む友雅をギンッと睨みあげるが、今更この男がそんなもので動じるはずも無い。 ゆるゆると腰を動かしつつ、意識を散らすように話しかける。 「なかなか愉しいものだね。『遙かなる時空の中で〜永久の別れを拒む者〜』とでも名づけるかい?」 「サブタイトルまでつけなくていいです!」 イメクラじゃないんだから!と忌々しく吐き捨てた言葉は、友雅には聞こえなかったのか、聞きなれぬそれに宜しい意味を感じ取ることができずに、あえて聞こえない振りをしているのか…。 「しかし『いつも同じじゃ飽きちゃいません?』って、君が言ったんじゃないか」 一方的に責められているような気がしたのか、不服そうに唇を尖らせた友雅の言葉に、再びあかねの闘志に火がつく。 「私は、夕餉を姫飯にするか、強飯にするかって聞いたんです。何でもかんでもシモに持っていくの、やめてくださいっ」 「そうは言ってもねぇ、姫飯などと君の口から聞くと…どこか淫靡な言の葉のように感じるのは致し方ないね」 「そのお飾りな頭蓋骨、一回かち割って、脳みそ覗いてみます?」 「いや結構。どうせなら、君自身を割りたいね。ほら、私の…ここで…」 腰を揺らすと、ぐぅぃんぐぅぃんと怪しげな効果音をバックにあかねの内を掻き混ぜる宝刀。 「──ん、にゃっ!そ…そりゃ、あれだけ早けりゃ元気でしょうけど!」 「つれないことを仰る姫君だ。仕方が無いだろう?あかねの中は…極楽浄土、まるで桃源郷にいるようなのだから。温かくて、柔らかくて…私を奥へ奥へと誘う刺激に…耐えられるはずも…あ、いや、あかね!掌に気を溜めて何をしようと…星晶針は私の技だよ!君がひとりで──こら、やめなさいっ!あかねっ!あか── …」 その後、彼がどうなったのかは…語らないほうが良いだろう。 ともかく、その直後に京を揺るがす程の雷にも似た光と音が、四条に向かって奔ったとか、そうでないとか。 |
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さくらのさざめき / 麻桜 様 |