HA・JI・ME・TE

=友雅なのに童貞&早漏!?=



2006/6/10

 HA・JI・ME・TE

- 友雅なのに童貞&早漏 -





「少将さまぁ……っ」

 長い黒髪の美しい女が、甘ったるい声を上げ、乱れる姿もそのままに、友雅の背にしがみついて声をあげた。
 女の蜜壷に挿し入れた友雅の指が、規則的に痙攣したそれに締め付けられ、爪を立てるように背に回されていた女の手から力が抜けてその全身が弛緩し、達したことを知る。

「……可愛い人?」

 友雅はどの女にもいつものように呼びかける。
 一抹の期待を込めて。
 が、やはり呼吸を荒げたままぐったりとし、ひっくり返った蛙のように足を広げたまま、満足げに眠り始めた女からの返事はなかった。

「浅ましいものだ……」

 女の姿とは異なり、さほど乱れてもいない着衣を軽く整えて、友雅は侮蔑を含んだため息をつきながら立ち上がる。
 けれど、誰よりも熱に飢えているのが自分だということを知っていた。

 女と夜を過ごすようになって何年になるだろうか。
 軽い口付けと愛撫で、いつも先に気をやってしまう女達との逢瀬をどれぐらい続けているだろう。
 いっそ触れることなしに強引にでも身体を合わせてしまおうかと思ったことも一度や二度ではないが、そこまでして契りたいわけでもなく……。
 ずるずるとこの歳まで、真に恋をしたことも身体を重ねたこともないままだった。



 ところが。
 春風のように突然異世界からやってきたあかねという15歳も年下の娘に、あっけないぐらいにさらりと心を奪われた。
 焦がれるような想いははじめてで、31歳にして初恋。
 幸運なことに、あかねも満更でもなかったようで、元の世界には戻らず、友雅と共に生きてゆくことを選んでくれたのだった。



*****



 さらうようにしてあかねを自邸に連れてきたまでは良かったが、友雅の心臓はかつてない速さで鼓動をうっていた。初めて殿上した時だって、賊の討伐で初めて人を切った時だって、これほど緊張したりはしなかったというのに。
 胸が潰れそうなほどいっぱいで、目の前にある夕餉もほとんど喉を通らない。
 頭の中は食後に訪れるだろうあかねとふたりでの初寝のことばかり。
 今までの女とは異なり、出来ることならあかねとは身体を重ねたい。すべても受け入れてもらいたい。
 そうは思うものの、なにぶん初めてなのだ。
(出来るのだろうか……)
 ガラにもなく気弱な自分に友雅は苦笑するしかなかった。

「もうだめ〜っ」

 まるで代弁するかのように、あかねが根をあげたような悲鳴をあげた。
 友雅と同じく、あかねの膳の上のものもほとんど減っておらず、手をつけられていない状態だ。

「神子殿? どうかしたのかい?」

 つとめて冷静に、緊張をひた隠し、今までとどこも変わらない様子を装い、友雅はあかねに笑みを向ける。

「き、緊張しちゃってわたし……せっかくのご馳走なのに食べられませんっ!」

 慣れぬ場所だからか、自分と同じようにあかねもこれから肌を合わせる時のことを思っているのか、それとも他に緊張する事柄があるのか。
 友雅には判断がつかず、更に早鳴る鼓動を感じつつ僅かに首を傾げるだけにとどめる。

「お願い、友雅さん! ご飯より先にエッチしちゃってください〜っ」

 それからゆっくりご飯にしましょう、と赤面したままあかねは力説してくる。
 あかねが同じようなことを思っていたことに、友雅の頬もつられたように僅かに赤く染まった。

「いいんだね?」
「うん…」

 強張った表情であかねが頷く。が、友雅の額には緊張の冷や汗が流れていることに、自分もいっぱいいっぱいなあかねが気づくことはなかった。



 口付けと丁寧な愛撫で、あかねの熱い呼吸が乱れ、身体から溶けるように力が抜けていくのがわかる。
 今まで夜を過ごした他の女とあまり変わらない反応に、少し落胆する気持ちと、龍神の神子も女なのだと安堵する思いとが入り混じる。
(いつもの行為と同じように、今夜はこのままあかねだけを満足させて終わってしまうのもいいかもしれないな)
 もしもうまく出来なかったらという恐れが、友雅をそんな気持ちにさせた。

「もうヤ、ダ……」

 あかねが嫌々するように顔を左右に振る。短い髪が揺れ褥をうち、パサパサと音をさせた。両手で顔を覆いまるで嘆いているように見える。

「痛かった?」

 友雅の指は、あかねの秘められた生娘特有のきつい秘所に挿れられているが、今まで痛みを感じている素振りはほとんど見られなかっただけに不安が浮かぶ。

「それは……だいじょ、ぶ……友雅さん、優しくしてくれてるし。だけど」
「だけど?」

 あかねが顔を覆った指の隙間から、ちらりと伺うように視線をのぞかせた。

「恥ずかしいから……」

 その言葉に、友雅は内心ホッと胸を撫で下ろす。

「わたしだけ脱がされてるのが恥ずかしいの」

 夜着を肌蹴させ、ほとんどの肌を露にしているのは確かにあかねだけだ。

「だから友雅さんも脱いで?」

 京では、女は慎み深いのを好まれていただけに、このような要望をされたのは初めてだ。
 友雅が驚きに動きを止めてしまった隙に、あかねがむくっと起き上がり「脱がしっこね」と、友雅の夜着に手を伸ばし、それを剥ぎ取り始める。
 腰紐をほどこうとするあかねの手が少し震えているのが目に入り、胸がツンと熱くなる。愛しい、と素直にそう思えた。

「神子殿……」

 そのふっくらとした頬に小さく口付けると、あかねがくすぐったそうに身を縮めながらも言った。

「あかね、って呼んで?」

 否応なしにドキドキと胸が高鳴りだす。

「あかね……」
「友雅さん……」

 お互いに名を呼んで一糸纏わぬ姿で抱きしめ合うと、自然にこれからふたりでひとつになるのだと、その時への期待が高まった。
(欲しい。この娘の身も心もすべて)
 初めてだからなどという不安を凌駕する想い。
 逸る気持ちを懸命に抑えつつ、そっとあかねを褥に横たわらせて、その足を割る。
 猛った友雅自身を押し当てると、あかねが「あっ、そこじゃなくてもうちょっと上の方」と、恥じらいながらももじもじと腰をずらせて場所を教えてくれた。
 初めてで勝手がわからないが、不思議と違和感なしにこうしてあかねが協力してくれている。
 ゆっくりと体重をかけながら、友雅自身を狭いあかねの中へと押し込んでゆく。

「「イタタタタ……」」

 ふたり同時に思わず小さな悲鳴を上げる。
 あかねは破瓜の痛みで。
 友雅はそのあまりの狭さに締め付けられて。

「と、友雅さんも痛いの!?」
「あまりにもキツイものだから」
「ご、ごめんねっ」
「いやいや、私より君のほうがつらいだろうからね。でも少しだけ、力を抜いてくれると有難いかな」

 どうすれば力が抜けるのかわからないのか、あかねがオロオロと狼狽し、瞳を潤ませる。
(あぁ……なんて愛いらしいのだろう)
 締め付けられるような甘酸っぱさが胸に広がった。
 その気持ちを抑えられず口付けて舌を絡めると、心地よさげなくぐもった声と共にあかねの身体から余計な力がふぅっと抜ける。
 その瞬間、ズルズルと友雅自身は引き込まれるようにあかねの中へと完全に納まった。
 熱く潤み、それでいて柔らかく包んでくれるあかねの内に、少しでも動いてしまうと、すぐにでも達してしまいそうで、友雅は息を詰めたまま動きを止めていた。
 自分の下では、今も痛みで苦しそうに目を閉じたままあかねが眉根を寄せている。
 申し訳なさでチクと胸が痛む。

「あかね……大丈夫?」

 気遣うとあかねが小さくコクンと頷く。

「まだ痛いけど、だいぶん……慣れてきたみたい」

 そう言ってうっすらと瞼を押し上げると、ふわりと微笑んだ。

「だから……友雅さん、好きにしていいよ」

 ブツンとなけなしの理性が切れて、めちゃくちゃに突き上げてしまいたい衝動が湧き上がるが、そこは橘友雅31歳。あかねよりも15も年上の意地にかけて、それをなんとか捻じ伏せて。

「お言葉に甘えて、少しだけ……」

 と、あかねの額に唇を落として、初めて知る快楽とひとりでは得られない幸福感を得る為に、ゆるやかな律動を始めた。
 けれど、これ以上そう苦しめることもないだろう。
 どうせ長い時間、もたないのだから。





「ごめんね……友雅さん」

 友雅の膝の上で、友雅の手から食事を食べさせてもらいながら、あかねが申し訳なさそうに頭を垂れる。

「何がだい?」
「気……使ってもらって、すぐに終わってもらっちゃったみたいで……」

 友雅の口端が苦笑に引き上がる。
(悪かったね……早くて。どうせ早いよ。しょうがないじゃないか、初めてだったんだから)
 あかねが俯いてしまっていて、このふて腐れた顔を見られていないことだけが救いだった。

 いつか話してみようか。
 実はあの時が私も初めてだったのだと。
 その時、あかねはどう言うだろう。
 驚くだろうか。
 呆れるだろうか。
 それともやっぱり、と納得するだろうか。

「ねぇ、あかね」
「ん?」
「私のことが好きかい?」
「もちろん、大好きです」

 あかねの頬に「私もだよ」と、小さく口付けると、あかねが振り向いて嬉しそうな笑顔を向けながら、首に腕を絡めて抱きついてくる。

 どんなことがあっても、この気持ちだけはきっといつまでも変わらない。




<END>




友雅祭への投稿作品、その2。
アンケートの投稿コメントを元にして書かせていただきました。
こんな初々しい(必死な感じの)友あかエッチは初めて書きました…笑

ルナてぃっく別館 / くみ 様